ヴェンゲルのラストイヤー!アーセナル・シーズンレビュー【2017-2018シーズン】

プレミアリーグ

arsenal

アーセナル 最終成績(2017-2018シーズン)
プレミアリーグ:6位
ヨーロッパリーグ:準決勝敗退
FAカップ:3回戦敗退
カラバオカップ:準優勝

ヨーロッパリーグの戦い。ヴェンゲル勝負の年

CL出場を逃し、ヨーロッパリーグとプレミアの両立がカギとなった2017-2018シーズンのアーセナル。オフシーズン早々に幸先よくコラシナツラカゼットを補強したものの、その後の補強は無く、既存メンバーやレンタルバックのウィルシャーの奮起に期待するしかない布陣となった。”WENGER OUT”を叫ばれながら契約延長したヴェンゲルの勝負の年。

【シーズン前半】相変わらずのサンチェスとエジル頼みの攻撃と不安定な守備

アーセナル 2017-2018前半 アーセナル 2017-2018前半2

昨季終盤に採用した3-4-2-1を継続するものの、チェンバレンを放出して手薄になったWB3バックを組めるほど豊富でないCB陣など、明らかに不安定な状態でスタートした。案の定、レスターとの開幕戦は、4-3という大味な試合でなんとか勝利。その後、ストークとリバプールに連敗を喫する。

課題はビルドアップの精度ボランチのポジショニング。ラムジーはボランチでの起用となりながらも常に高いポジションを取り、ビルドアップで3CBとジャカだけでは前線にボールを展開できず、エジルが下がってきて何とか展開するばかり。さらには、その精度が低いビルドアップを狙われて、ボールを奪われてショートカウンターを許すパターンをたびたび繰り返す。攻撃でも、エジルが低い位置からスタートせざるを得ないことで、ラカゼットとサンチェスが孤立し、相変わらずサンチェスの個人突破頼みの形となる。

3-4-2-1に固執し続けるヴェンゲル。特に守備陣の選手層が薄いながらも、モンレアルとベジェリンのフル稼働、万能なナイルズの台頭、ELでのターンオーバーなどにより、なんとか継続していくものの、戦術の成熟度が上がっているようには見えない。徐々に4-2-3-1を併用し始めたものの、大きな改善にはつながらなかった。

結果的に、リーグ戦はシーズン前半で首位シティに大差を付けられ、さらには5,6位あたりが定位置となってしまい、CL出場権獲得の4位を目指すのが精一杯な状況となった。一方、ELのグループステージはターンオーバーして控え組+若手で臨み、難なく決勝トーナメント進出。ナイルズ、ネルソン、ウィロックなどを積極的に起用し、若手に経験を積ませる場ともなった。メンバーを大きく変えたことで機能しているとは言えない試合が多かったが、それでもグループステージを難なく勝ち抜けられたのは、やはりCLとELの大会のレベルの差を感じざるを得なかった。


昨季同様、ヴェンゲル限界説が唱えられる中、冬の移籍市場でアーセナルは大きな動きを見せた。移籍の噂が絶えなかったサンチェスはトレードでマンチェスターユナイテッドへ。代わりに、ムヒタリアンがアーセナルに加入。DF陣の補強には若いマヴロパノスを獲得。前線にはワールドクラスのストライカーであるオーバメヤンを獲得。代わりにここ数年チームを支えてきた、ジルーウォルコットコクランが相次いで移籍。明らかにこれまでのヴェンゲルの補強戦略とは異なるように見えるのは、新たにスカウト担当として就任したミスリンタートの影響が大きいと考えられる。

【シーズン後半】EL優勝を目指す戦いと新戦力への期待

アーセナル 2017-2018後半 アーセナル 2017-2018後半2

シーズン後半戦、オーバメヤンがELに出場できない影響もあり、すぐにリーグ戦でオーバメヤンを起用し続けたが、連携が合わず、得点は決めつつもチームとしては機能していない状態が続く。リーグ戦で下位チームにあっけなく敗れる試合が続き、昨季のマンチェスターユナイテッド同様、リーグでの4位以内フィニッシュは諦め、ELのタイトル獲得により来季のCL出場権獲得を目指すことになる。

ELでは、ベスト16でミランを引き当ててしまう不運のみでなく、ラカゼットの負傷も重なって、FWはウェルベックに頼らざるを得ない状況に。しかし、アウェイでの1stlegを0-2で勝利すると、ホームでの2ndlegも3-1で勝利し、ベスト8進出を勝ち取る。続く準々決勝のCSKA戦では、ホームでの1stlegを4-1で勝利し大きなアドバンテージを得るものの、アウェイの2ndlegで2点を先制され、トータルスコアで1点差まで追いつめられるが、ウェルベックの活躍もあり、試合終盤に2点をもぎ取り、準決勝進出を果たした。

EL優勝へ向けて大きく立ちはだかると思われたアトレティコマドリーを準決勝で引き当て、今シーズン最大の山場を迎えたアーセナル。そして4/20、ヴェンゲルの今シーズン限りでのアーセナル退団が発表される。22年もの間アーセナルを指揮し続けたヴェンゲルの最後をELのタイトルで飾るため、アトレティコマドリー相手に選手の奮起が期待された。

過去記事:Merci Arsene ~パス&ムーブで世界を魅了したヴェンゲル~

アトレティコをホームに迎えた1stleg。わずか10分で相手選手が退場し、絶好のチャンスを得たアーセナル。しかし、相手は百戦錬磨のアトレティコであり、自慢の鉄壁で簡単にはゴールに近づかせてくれない。なんとか1点奪い、さらに追加点を目指しつつも苦戦していると、ロングパスから抜け出したグリーズマンにゴールに許し、1stlegを1-1で終え、アドバンテージを台無しにしてしまう。

堅守のアトレティコに対して得点が必須となる2ndleg。開始早々にコシェルニーの負傷退場のアクシデントもあり先行き不安の中、案の定、宿敵ジエゴ・コスタにゴールを許し、苦しい状況に追い込まれる。堅い守備を維持しつつも速攻でチャンスを作るアトレティコに終始ペースを握られ、DF陣にことごとくボールを跳ね返され、ゴールネットを揺らすことはできず、無念の準決勝敗退。ヴェンゲルのラストイヤーをEL優勝で飾る夢は叶わなかった

リーグ戦も6位フィニッシュがほぼ確定となったシーズン終盤、冬に獲得したマヴロパノスを起用すると、プレミアの激しさでも負けない強さを見せ、来季へ期待させるパフォーマンスを発揮した。また攻撃陣では、4-3-3でトップにラカゼット、左WGにオーバメヤンという形を見い出すと、オーバメヤンが徐々にチームにフィットする中でワールドクラスの決定力を垣間見せるようになり、ヴェンゲルのホーム最終戦を5-0という素晴らしい形で締めくくった。そして、シーズン最終節、アウェイでハダースフィールドに素晴らしい歓迎をされる中、不甲斐ない内容ながらも1-0の勝利を掴み、ヴェンゲルのアーセナルでの22年間は幕を下ろした

【総括】崩壊した守備。安定感を増したジャカ。前線4人の共存は来季へ持ち越し

シーズン前半と後半でフォーメーションも前線のメンバー構成も変わったヴェンゲルのラストイヤー。一貫していたのは、守備の崩壊DFラインの層の薄さ成熟しない守備戦術により、リーグでは最終的に51失点。優勝したマンチェスターシティが27失点であり、その倍近い失点数となってしまっている。もともと怪我に不安があったコシェルニーに頼り続けざるを得ない層の薄さに加えて、加入当初の安定感を忘れるほどの低調なパフォーマンスに終始したムスタフィなど、間違いなく夏の補強ポイントとなるCB。成長を期待したいチェンバースとホールディング、大きな可能性を示したマヴロパノスもいるが、確実に計算できるCBの獲得は必須だろう。さらに、控えがいない状況で出場し続けた右SBのベジェリンについても、スピード以外の面がなかなか伸びず、攻撃でも精度の低いクロスや相手と対峙すると行き詰まる突破力の無さで、来季のスタメン確約を考えざるを得ない状況。ベジェリンが再度奮起するような高いレベルの右SBの補強についても、検討が必要だろう。

大きな怪我も出場停止も無くフル稼働した加入2シーズン目のジャカ。高精度のロングパスは大きな武器である代わりに、初年度は危険なファールでたびたびカードをもらって不安定さを露呈していたが、今シーズンは明らかにそれが改善。危険なファールが減り、さらにビルドアップでも小刻みなパス交換をしながら相手を揺さぶりつつ、持ち味のロングパスでチャンスを作るシーンが増え、チームにとって欠かせない存在となった。高精度のロングパスはカウンターで驚異的なスピードを発揮できるオーバメヤンとの相性も良いはずであり、来季はさらにチームのストロングポイントになることに期待したい。

オーバメヤン、ラカゼットというトップレベルのストライカー2人に加え、チャンスを創造できるエジルとムヒタリアンの2人で構成する前線の4枚のユニットは、実質来季に持ち越しとなった。ラカゼットやムヒタリアンが入れ替わり怪我をする形となり、今季は4人が揃った試合がほとんど無かったが、ラカゼットとオーバメヤンが共存する形もシーズン終盤に見えてきており、4人が揃って迎える来シーズンは爆発的な攻撃力を見せてくれるに違いない。

ついにヴェンゲルに代わり新監督を迎えることとなった来シーズンのアーセナル。ここ数年続く低迷期を抜け出すことができるだろうか。今後も目が離せない。

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