極上のHighインテンシティー!リバプール 対 ナポリ レビュー【2018/19 CL GS第6節】
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試合結果とフォーメーション
2018/12/11 CL グループステージ 第6節
リバプール 1-0 ナポリ
34分 サラー
前半
両チームともにほぼベストメンバーかつおなじみの布陣で臨んだ一戦。決勝トーナメント進出をかけたグループステージ最終節。
序盤からリバプールがホームの雰囲気をそのままプレーとして体現し、前線から強めのプレスをかけ続けてインテンシティーの高い内容に。
両チームともに、前線はテクニックやスピードに優れた選手が揃い、CBには高さも強さもある選手が揃うため、縦に早い攻撃が繰り返される展開になる。さらにリバプールは大きなサイドチェンジも使い、ダイナミックな展開を繰り広げる。
リバプール優勢で進んだ34分、ミルナーの縦パスを受けたサラーがフェイントでクリバリをかわすと、角度がないところからクロスを匂わせながらもGKの股下を抜くシュートを突き刺し、リバプールが先制。
そのままリバプールが1点リードして前半を折り返す。
リバプールのビルドアップとナポリの守備
リバプールのビルドアップ時、ナポリは2トップがCBにプレスをかけ、SHがリバプールのSBにプレスをかけるものの、アンカーのヘンダーソンがフリーとなりやすい状況に。
リバプールは、常にヘンダーソンかSB(状況によってはIHがSBの位置)のどちらかへのボールを入れやすい状況となるため、後方で余裕を持ってボールを回して探りつつ、ボランチ→SB、もしくは、SB→ボランチとダイレクトで繋ぐことで、前を向いて前進のスイッチを入れるシーンを何度も見せた。
リバプールの狙い①
後方で余裕を持って回しながらも狙っていた形の一つが、この試合で効果的な場面を数回作ったマティップからサラーへの縦パス。
CBから最前線へのグラウンダーの縦パスは通常は通りにくいものの、ワイナルドゥムがサイドに流れるなどしてハムシクを引きつけ、さらにフィルミーノが下りてきてアランが警戒せざるを得ない状況を作ることで、サラーへの縦パスのコースが空くようにチームとして連動した動きを見せていた。サラーにボールが入れば、右サイド奥のスペースを使って前線で起点を作り、その間にフィルミーノやマネがゴール前へ走り込むことで得点を狙った。
これによって、サラーとクリバリの1対1が何度も見られ、クリバリが封じ込める場面もあったものの、この試合ではサラーのほうが上回っていたと入れるだろう。得点シーンも、状況は異なるものの、ミルナーが右サイドでボールを持った際に、フィルミーノが下りてきてボランチを警戒させ、それに連動してミルナーからサラーに縦パスを入れたことから生まれたシーンである。
リバプールの狙い②
マティップからサラーへの縦パスの他にも、SBから前線への浮球のパスも狙っていた1つの形のように見受けられた。両SBともに、タッチライン際でサイド側の利き足から精度の高いパスを出すため、守備側としては防ぎにくいパスであり、さらにボールが渡ってしまうと、サラーやマネのスピードやキープ力が驚異となった。
ナポリのビルドアップとリバプールの守備
ナポリのビルドアップ時、リバプールはいつも通り前線3枚でプレスをかけ、IHやSBもかなり前から強めのプレスをかけていた。ナポリは、左SBのマリオ・ルイが少し高めに上がりDFラインがスライドすることで後方を3枚にするシーンが多かったものの、ボランチや両サイドにボールを入れても激しいプレスで前を向くことができず、後方に戻すシーンが多くなり、ほとんど前進できなかった。
ナポリとしては、F・ルイスが空きやすいはずであるがそこまでボールをつなげられず、また前線でも数的同数でスピードを活かせる場面を作りやすいはずであるが、ロングボールを蹴る余裕が無いほどリバプールのプレスが前から厳しかったため、それも活かせなかった。
多少余裕を持てたシーンやカウンターのシーンでは、インシーニェが右サイドの奥のスペースに流れてそこを起点にしようとする狙いが見えた。
ナポリの回避策
ナポリは、後方からショートパスでは前進できずにGKまで下げるシーンが増えたものの、マクシモビッチがハーフウェイラインあたりのタッチライン際にポジショニングし、GKからそこにロングボールを入れる形から前進するプランも持っていた。
193cmのマクシモビッチと175cmのミルナーの競り合いになるため勝ち目は十分にあるものの、そこからあまり繋げられず、それほど有効な狙いとはならなかった。
前半のスタッツ
マッチスタッツ(左:リバプール、右:ナポリ)
引用:SofaScore.com
前半、リバプールは内容で圧倒したものの、枠内シュートは1本のみで、ビッグチャンスも1回のみ(得点シーンではない)となった。ゴールシーンの最後の局面ではサラーの個の力が大きかった。
ナポリは、ロングボールが多くなったものの成功率は高くなく、クロスもすべて成功しなかった。
後半開始~69分
後半開始時、両チームともにメンバーやフォーメーションの変更は無し。
ナポリのビルドアップと攻撃の変化
前半にビルドアップで苦戦したナポリは、大きく形は変えていないものの、後半からF・ルイスがワイナルドゥムやヘンダーソンの脇に意識的にポジショニングするようになり、ビルドアップの出口となろうとした。
さらに、左SBのマリオ・ルイは前半よりも高めにポジショニングするようになり、メルテンスも左サイド奥のスペースを狙うようになった。ナポリは左サイドのオーバーロードを活かして同点を狙う。
後半も全体的にリバプールのハイインテンシティーが続くものの、ナポリも左サイドを起点に、前半よりは前進する場面を作れるようになった。
70分~
ナポリはFWにミリクを投入し、左SB、左SHを代え、同様に左サイドからチャンスを作ろうとする。
ミリクが入ったことで、少し落ちてポストプレーをしたり、サイドからのクロスに合わせるなどの攻撃のパターンが出てくるようになった。
70分過ぎに立て続けにナポリはシュートシーンを迎えるも、いずれも決めきれず。逆にナポリが前がかりになったことで、リバプールのカウンターのシーンがより一層増える。
79分~
リバプールは、フィルミーノに代えてケイタを投入し、サラーをトップ、ケイタを右WGとする。この交代により、ケイタの運動量を活かして左SBグラムの攻撃参加を抑止する狙い。さらにサラーをトップに残すことで、カウンターの脅威も残して追加点を目指す。
86分、スタミナが衰えないリバプールは、ボール奪取からカウンターでマネの決定機を作るものの決められず。
88分~
追い付きたいナポリは、クリバリを前線に上げてパワープレー。前線にミリクとクリバリを並べ、ロングボールを入れる。
91分、右からのクロスボールを誰もヘディングできず、ゴール目の前のミリクの足元まで届き最大のチャンスを迎えるものの、アリソンが目の前からのシュートをスーパーセーブで弾き、難を逃れる。
その後93分、マネがカウンターで抜け出し決定機を迎えるものの、またも決められず。
しかしそのままリバプールが逃げ切り、勝利を掴むとともに、グループステージ突破を果たした。
後半のスタッツ
後半のみのスタッツ(左:リバプール、右:ナポリ)
引用:SofaScore.com
後半は、リバプールがシュート15本(うちエリア内シュート11本)、ビッグチャンス4回と圧倒したものの、全て決められずに追加点を挙げられず。
ナポリは後半もロングボールが多くなり成功率は上がったものの、クロス精度は前半同様に低くなった。
【PickUpData】圧倒するも決定力を欠いたリバプール
マッチスタッツ(左:リバプール、右:ナポリ)
引用:SofaScore.com
内容ではリバプール優勢の印象が強烈であり、実際にシュート数でもビッグチャンス数でも圧倒したものの、結果は1点差となった。
守備スタッツでは、デュエル勝利数、タックル成功数、インターセプト数、クリア数でいずれもナポリが上回った。リバプールのインテンシティーの高さが目立ったため、リバプールの守備スタッツが上回りそうなものの、リバプールの攻撃回数が多いためにナポリの守備スタッツの数字が多くなったと言えるだろう。
平均ポジション(左:リバプール、右:ナポリ)
引用:whoscored.com
リバプールは、ミルナー(7番)とワイナルドゥム(5番)がかなり高い位置となっており、インテンシティーの高さを表していると言えるだろう。
ナポリは、左サイドを起点にしていたことが表れているものの、右サイドのカジェホンの位置が低くサイド寄りであり、フィニッシュに絡む場面が少なかったことが表れている。
攻撃サイド(左:リバプール、右:ナポリ)
引用:whoscored.comヒートマップ(左:リバプール、右:ナポリ)
引用:whoscored.com
試合の印象通り、リバプールは右サイド、ナポリは左サイドからの攻撃が多くなった。
ヒートマップでも、ナポリはPA内にほとんど入れず、また後方でのボール保持が多く、崩しきれなかったことがよく表れている。
ゴール期待値
引用:BetweenThePosts
ゴール期待値は、リバプールが3.02点に対して、ナポリが0.98点となり、大きく差が開いた。
リバプールのポジション&パスマップ
引用:BetweenThePosts
リバプールのパスマップを見ると、やはり右サイドが多く、マティップ、アーノルド、サラーの3選手のパス交換が多かったことがわかる。中央はあまり使っておらず、サイドからの前進が多いことが表れている。
ナポリのポジション&パスマップ
引用:BetweenThePosts
ナポリのパスマップを見ると、前進するためのパスコースがかなり限定されていたことがわかる。
【PickUpData】攻守に躍動したミルナーとアーノルド
リバプールのパススタッツ
引用:whoscored.com
リバプールのパススタッツを見ると、アーノルドが6本、ミルナーが5本、サラーが4本のキーパスを記録しており、複数の出しどころから多くのキーパスを生み出していたことがわかる。また、SBであるアーノルドが6本のキーパスを記録していることは特筆すべきことであると言えるだろう。
リバプールの守備スタッツ
引用:whoscored.com
リバプールの守備スタッツを見ると、タックル数でもミルナーとアーノルドが上位の数字を記録しており、攻守に貢献していたことがよく表れている。
【PickUpData】守備で奮闘したアランとクリバリ
ナポリの守備スタッツ
引用:whoscored.com
ナポリの守備スタッツを見ると、アランが11本のタックルを記録しリバプールの中盤に対抗。サラーとマッチアップしたクリバリも一定の結果を残した。
ハイインテンシティーを90分保ったリバプール
グループステージ突破が危ぶまれたリバプールであるものの、ここぞとばかりに持ち味を発揮した試合内容を見せて勝利を掴んだ。メンバー、フォーメーション、戦術が変わらずに相手に対策されやすいものの、コンディションさえ問題なければ、それを打ち破るほどの高いインテンシティーを見せることができるのがリバプールの強みであると言えるだろう。