優勢に進めるも最後まで崩しきれず。アーセナル 対 スポルティング レビュー【2018/19 EL GS第4節】
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試合結果とフォーメーション
2018/11/08 ヨーロッパリーグ GS第4節
アーセナル 0-0 スポルティング
前半

アーセナルはリーグ戦からメンバーを大幅に入れ替える。フォーメーションはいつもの4-2-3-1。スポルティングは、ELの前節の直接対決からメンバーを4人変更し、フォーメーションも4-1-4-1に変更。
序盤からアーセナルがボールを保持してスポルティングが守りを固める展開に。アーセナル優勢で進むものの、サイドからのクロスが中心となり、なかなか崩し切ることができない。
すると24分、クロスに飛び込んだウェルベックが着地時に負傷し、重傷を負う。これにより、アーセナルはウェルベックに代えてオーバメヤンを投入する。
その後もアーセナル優勢で進むもののゴールは生まれず、スコアレスで前半を折り返す。
アーセナルのビルドアップとスポルティングの守備
スポルティングがあまり前からプレスに来ず、自陣にリトリートして4-5-1のブロックを作ることが多かった。中央を固めており、アーセナルは2列目の選手に縦パスを入れることが難しくなった。
ラムジーとゲンドゥージは頻繁に左右のポジションを入れ替えるものの、2人とも右利きの選手であるため、左SBのジェンキンソンへのパスは相手にひっかかりやすく、さらに、スポルティングのB・フェルナンデスが他の選手よりもきつくプレスをかけに前に出るため、左サイドからの展開が困難になった。
この結果、必然と右SBのリヒトシュタイナーを経由しての前進が多くなったアーセナル。
スポルティングのビルドアップとアーセナルの守備
スポルティングがGKを介してビルドアップする場面では、2CBがPA脇に開き(観音開き)、アンカーのグデリが少し下りて中央でもらおうとするが、これに対してアーセナルは、イウォビ、ウェルベック、スミス・ロウの3枚で前から強めにプレスをかけることで、GKからのパスを自由にさせず、スポルティングの前進を許さなかった。
また、一定の高さまでスポルティングが前進した際には、アーセナルは通常通りの4-4-2のブロックを作り、ゴール前への進入を防いだ。
後半開始~87分
後半になっても、両チームのフォーメーション、メンバー変更は無し。前半同様、アーセナルがボールを保持してスポルティングがリトリートして守りを固める展開。
崩せないアーセナルは60分にジェンキンソンに変えて本職のコラシナツを投入。左サイドからの攻撃の改善を図る。
スポルティングは69分、トップのモンテーロに代えてドストを投入。196cmの長身選手の投入によりセットプレーに活路を見い出したい狙い。
スポルティングの守備を攻略できないアーセナルは3枚目のカードとしてFWのエンケティアを投入しようとしたところ、リヒトシュタイナーが負傷し、交代カードを変更してナイルズを右SBに投入。
85分、スポルティングはルイスに代えてペトロビッチを投入。またまた長身193cmの選手の投入により、攻守において高さを活かす狙い。
その後87分、スポルティングの中盤からのバックパスがCBの裏のスペースにこぼれると、オーバメヤンがスピードを活かして先に追いつき、マテューに倒される。マテューはこのプレーで一発レッドで退場。スポルティングは10人となる。
88分~
10人となったスポルティングはペトロビッチをCBに下げ、4-4-1で守りを固める。
アーセナルは最後までスポルティングの守備を崩せず、スコアレスドローに終わった。
【PickUpData】決定機を作れなかったアーセナル
マッチスタッツ(左:アーセナル、右:スポルティング)
引用:SofaScore.com
アーセナルがポゼッション率で圧倒し、シュート数も大きく上回っているものの、枠内シュートはわずか2本、ビッグチャンスも1回のみとなっている。最後の局面で崩せなかったと言えるだろう。
また、スポルティングはクリア数で驚異の32回を記録し、攻め込まれても最後はすべて弾いたと言えるだろう。
平均ポジション(左:アーセナル、右:スポルティング)
引用:whoscored.com
試合を見ていた印象通り、アーセナルの両SBではかなり高さが異なり、右のリヒトシュタイナーは高い位置を取れているものの、左のジェンキンソンは低くなっている。もともと右が本職であるジェンキンソンが左を努めたことと、スポルティングのプレスがアーセナルの左サイドに対して特に強かったことが影響しているだろう。
攻撃サイド(左:アーセナル、右:スポルティング)
引用:whoscored.com
アーセナルの攻撃サイドを見ると、中央が20%を切っている。サイドの割合が高いのはいつも通りであるが、中央が20%を切っているのは、いかにスポルティングに中央の守備を固められて突破できなかったかを表しているだろう。
ヒートマップ(左:アーセナル、右:スポルティング)
引用:whoscored.com
アーセナルのヒートマップを見ると、両サイド深くまで使えているものの、バイタルエリアとPA中央がほとんど使えていないことがわかる。まさしくスポルティングにゴール前を塞がれたことを表してる。
また、スポルティングのヒートマップを見ると、アタッキングサードにほぼ侵入できておらず、攻撃でゴール前まで進入できなかったことを表している。
【PickUpData】アーセナルの2列目が効果的なプレーができず
アーセナルの攻撃スタッツ
引用:whoscored.com
アーセナルの2列目のムヒタリアン、イウォビ、スミス・ロウが効果的なプレーができず。サイドから前進するしか無かったものの、サイドでもドリブル突破するなどのプレーが物足らず。ドリブル成功数や被ファール数はかなり少ない結果となった。
アーセナルのパススタッツ
引用:whoscored.com
ボランチから打開を図ろうとしたラムジーとゲンドゥージであるが、意外にもゲンドゥージよりもラムジーの方が圧倒的にパス本数で上回った。しかし一方で、組み立てよりもゴール前でのプレーを得意とするラムジーの良さを発揮できなかったとも言えるだろう。
【PickUpData】B・フェルナンデスの守備とCBの驚異のクリア
スポルティングの守備スタッツ①
引用:whoscored.com
スポルティングは、中盤のB・フェルナンデスがきついプレッシャーでアーセナルの左サイドからの前進を防ぎ、実際にタックル数でも4回を記録。また、アーセナルの右サイドからの前進が多くなったが、前進後にスポルティングの左SBのアクーニャが守備で奮闘し、タックル数5回を記録。
スポルティングとしては、ボールの奪いどころを定めて、狙い通りの守備ができたのかもしれない。
スポルティングの守備スタッツ②
引用:whoscored.com
スポルティングは試合を通じてトータルで32回のクリアを記録しており、更にそのうち、2CBがそれぞれ10回、8回を記録している。ゴール前への突破を許しても最後の局面で防ぎきったことを表しているだろう。
【PickUpData】スポルティングのゴール期待値はわずか"0.06″
Solid defensive performance from Arsenal, limiting Sporting Lisbon to only five shots, of which four came outside the box. Should have scored from one of their big chances.
Ramsey and Guendouzi being a very active double pivot in distributing possession.#AFC#passmappic.twitter.com/UMAKh8Ts25— Between The Posts (@BetweenThePosts) 2018年11月9日
ゴール期待値を見ると、アーセナルの1.54点に対してスポルティングはなんと0.06点という衝撃の低さ。アーセナルが攻撃で押し込みつつ、カウンターなども許さなかったことが表れている。
また、パスマップを見ると、スミス・ロウがボールに絡めていないことが顕著に表れている。中央の守備が固められたことで難しくなったのはあるものの、下りてボールを受けたり、サイドに寄って連携を見せたりするプレーがもっとあってもよかったのかもしれない。
活躍できるシーンが限られるスミス・ロウとゲンドゥージ
スタメンフル出場を果たした若いスミス・ロウとゲンドゥージであるが、厳しい試合になったと言えるだろう。
トップチームですでに一定の出番があるゲンドゥージであるが、ボールホルダーに寄ってボールを絡みながらテンポを作っていくプレーはどの試合でも発揮できるものの、引いた相手に対して工夫するようなプレーはやはりまだ少ないと言えるだろうか。当然ながらボランチを組む相方や周りの選手の動き出しなども影響することは間違いないが、個の力で違いを作れる選手になるためにはまだまだ経験が必要だろう。
同じくスミス・ロウも、スポルティングの守備に対して持ち味を発揮できなかったと言える。これまでの試合を見る限り、一定のスペースがある状態で前を向いてドリブルで仕掛けられるプレーが発揮できると良さが出ると言えるだろう。
2人ともまだ10代であり、類まれなるポテンシャルを持っていることは間違いないものの、現時点では光るプレーを発揮するシーンは限られていると言えるかもしれない。今後もカップ戦やELでは一定の出場機会がある可能性が高いため、対戦相手のレベルが高くなっていく中で、よりプレーの幅を広げたり、得意なプレーに磨きをかけていってほしい。
長期離脱が濃厚となってしまったウェルベック
今シーズンも控えの立ち位置ながら、リーグ戦では途中出場で攻守に貢献し、カップ戦やELでは得点に絡む活躍を見せてきたウェルベック。負傷の詳細はまだ明らかになっていないものの、今シーズン絶望のレベルの負傷である可能性も十分にある。アーセナルの前線にはオーバメヤンとラカゼットがいるものの、貴重な選手の長期離脱がチームに与える影響は少なくないと言えるだろう。
ELはグループステージ突破が決定
スコアレスドローに終わったものの、首位をキープして、4節終了時でグループステージ突破が決定。残り2試合のうちどちらかに勝利すれば1位突破が決定という状況となった。
ここから年末にかけて厳しいスケジュールが続く中、ELでは思い切ったターンオーバーができる状況となったのは大きいだろう。この試合でウェルベックとリヒトシュタイナーが負傷し、特に控えの選手たちの怪我人が目立つ状況となってきた。主力を継続起用することでさらに怪我人が出やすくなるため、若手の起用を含めた采配が求められるかもしれない。
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