逃した勝ち点1。ACL仕様は未開封。上海上港 対 川崎フロンターレ レビュー【2019 ACL GS第1節】
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試合結果、スタメン、フォーメーション
2019/03/06 ACLグループステージ 第1節
上海上港 1-0 川崎F
89分 フッキ(PK)
フロンターレは概ねこれまでと同じメンバーであるものの、長谷川をスタメンに抜擢。ダミアンはベンチスタート。
上海上港は負傷明けのフッキがこの試合からスタメン復帰し、前線にエウケソン、フッキ、オスカルが並ぶ。
前節の振り返りはこちら
”我慢”のフロンターレと”徹底”した鹿島。川崎F 対 鹿島 レビュー【2019 J1 第2節】
試合経過と両チームの狙い
【前半】単発で仕掛け続ける長谷川
試合開始。フロンターレは落ち着いて試合に入り、相手の布陣や出方を冷静に探る。
8分:【上海上港】ガカン → フカン
CB中央のガカンが負傷により開始早々に交代。右WBのオウがCB中央に移り、フカンが右WBに入る。
上海上港の攻撃とフロンターレの守備
上海上港のビルドアップ時、フロンターレは4-4-1-1のような形になり、小林と憲剛が縦関係となり、憲剛が上海上港のボランチをケア。小林が片方のサイドにコースを制限し、続けてSH(家長、長谷川)が寄せ、さらに後ろのSBもWBに寄せる形。
上海上港のショートパスによる前進をフロンターレはあまり許さなかったものの、上海上港は前線のフッキめがけてのロングボールやフッキが少し下りてきて車屋を背負いながら縦パスを受ける形で前進するシーンを作っていった。
しかし、フロンターレのDFラインとボランチの踏ん張りにより跳ね返すシーンも多く見られた。
上海上港の攻撃
- 【定位置攻撃】 詰まったらフッキにロングボール
- 【ポジトラ(ボール奪取時)】 早めに前線に展開
フロンターレの守備
- 【守備ブロック】 4-4-1-1 憲剛がボランチをケア
フロンターレの攻撃と上海上港の守備
フロンターレのビルドアップ時、上海上港はミドルゾーンでは3-4-3である程度前からプレスをかけるものの、フロンターレはダイレクトパスや流動的なポジショニングでそれほど苦にせず前進。しかし、敵陣のファイナルサードでは上海上港が5バックになるため、崩しきれずにサイドからクロスを上げて跳ね返されるシーンが目立った。
フロンターレが中盤でボール奪取した際やビルドアップで中央に縦パスが入った際には、サイドに展開して長谷川や家長から縦に早い攻撃を仕掛る場面を作った。しかし、ゴール前で待つのが小林だけのシーンが多く、クロスを跳ね返されたりミドルシュートを打つしかないシーンが目立った。
フロンターレの攻撃
- 【定位置攻撃】 右は家長がキープして起点。左は長谷川のドリブル勝負
- 【ポジトラ(ボール奪取時)】 CB裏やサイドのスペースに早めに展開
上海上港の守備
- 【守備ブロック】 3-4-3ミドルゾーンブロック。自陣では5-3-2
前半は長谷川がドリブルで仕掛けるシーンが目立ったものの、ミドルシュートで終わるシーンが多く、決定機は作れず。
しかし守備では、全体的に冷静に対応して上海上港に決定機を作らせず。
前半をスコアレスで折り返した。
前半のスタッツ
前半のスタッツ(左:上海上港、右:フロンターレ)
引用:SofaScore.com
優勢に進めた印象があるフロンターレは、ボール支配率63%でシュート9本。うち枠内シュートは5本。しかしミドルシュートなどが多く、崩しきったシーンはほとんどなく、ビッグチャンスは0。
対する上海上港はフッキのキープ力を活かして攻撃するシーンを見せたが、シュートは5本のみでこちらもビッグチャンスは無し。
【後半】上海上港の変更により試合展開に変化が
後半開始から上海上港は立ち位置を若干変更。オスカルはより明確に中盤に入って3センター気味に。前線はフッキを前に出して、エウケソンがシャドーもしくはトップ下のような縦関係に。
上海上港のこの変更により、攻守に変化が生まれる。
上海上港の攻撃の変化
中盤では前半よりも明確にオスカルが低めの位置を取り、ビルドアップ時に積極的にボールに絡むことで後方でのボール回しが安定。その間に両WBが高い位置に上がりつつ、オスカルがそのまま中央でのダイレクトパスで持ち上がったり、前線へロングボールを入れるなどして、前半とは異なる形で前進する狙いを見せていた。
フロンターレは上海上港の後方でのビルドアップに対して数的不利のために制限しきれず、エウケソンがフッキと縦関係になっているために大島と守田が前にプレスをかけにくい状態に。
上海上港の守備の変化
フロンターレのビルドアップに対する上海上港の守備にも変化が生まれ、オスカルがより明確に低めの位置をとって3センターで中央を封じ、さらにフッキとエウケソンが縦関係になることで大島と守田をケア。フロンターレの中央からの前進を防ぎたい狙い。
フロンターレはサイドから前進せざるを得ない状況を作られるものの、サイドでボールを回しつつ、上海上港のWBが前に食いついてきたタイミングを狙って憲剛やボランチにボールを入れ、そこからダイレクトでサイド奥のスペースを使うパスを出すことでファイナルサードに前進するシーンを作っていった。
しかし、次第に上海上港が全体のラインを下げて対応し、フロンターレがファイナルサードまで押し込み続けるシーンが目立ってくるものの、5バックを崩すことができず。
前半はボール奪取後の速攻から何回かゴール前まで運べていたフロンターレであるが、中央の密度を高めた上海上港に対して後半は同じようなシーンをあまり作れなくなった。
試合は後半開始数分後、フッキのシュートを防ごうとして足を出した馬渡の足首にフッキのシュートが至近距離で当たって馬渡が負傷。
50分:【川崎F】馬渡 → 登里
登里はそのまま右SBに入る。
直後の上海上港の右CK。エウケソンがフリーになりヘディングで合わせたボールにさらにフッキが押し込もうとするも、これはポストに当たりフロンターレは失点を免れる。
59分、カウンターで家長が右サイド深くまで突破すると、左足に持ち替えてクロス。中央で長谷川にドンピシャで合うものの、DFと競り合いながらのヘディングはしっかりミートせず。ボールは惜しくもゴールの脇を通り抜ける。
徐々にフロンターレが押し込む時間帯が増えるものの、決定機は生まれず。
79分:【川崎F】長谷川 → 阿部
試合終盤の87分、上海上港の右サイド深くでの攻撃に守田がクロスを防ごうとスライディングしたところ、相手の空振り気味のボールが守田の手に当たり、上海上港がPKを獲得。このPKをフッキが決めて、上海上港が終了間際に勝ち越しに成功。
89分:【川崎F】守田 → ダミアン
憲剛をボランチに下げ、ダミアンがトップに入る。
フロンターレはダミアンを投入して前線に早めにロングボールを入れるも、こぼれ球を拾えずにゴール前まで迫れず。
試合はそのまま終了して、ホームの上海上港が勝ち点3を手にした。
後半のスタッツ
後半のスタッツ(左:上海上港、右:フロンターレ)
引用:SofaScore.com
後半は前半以上にフロンターレがボールを握り、ボール支配率は65%となるものの、シュートはわずか4本でビッグチャンスは速攻からの長谷川のヘディングのみ。どちらかと言えば上海上港にボールを持たされ、5バックを崩しきれなかったと言える。
上海上港はカウンターやセットプレーを活かして後半はシュート8本。CKからも際どいシーンを作り、ビッグチャンスは4回。
【PickUpData】ボールを保持するも崩せなかったフロンターレ
試合の流れ
フロンターレがボール保持する展開になったものの、上海上港は攻撃のシーンが多くないながらもしっかりとゴール前まで運んでチャンスを作った。上海上港にとっては終盤までスコアレスであったのは不満かもしれないものの、最後はPKで勝ち越して勝利を掴み、内容としては結果的に狙い通りになったのかもしれない。
マッチスタッツ(左:上海上港、右:フロンターレ)
引用:SofaScore.com
試合を通じてシュートは13本ずつ。しかしビッグチャンスを多く作ったのは上海上港。
両チームのシュート詳細
※上:フロンターレ、下:上海上港
引用:AFC公式
シュート数は同じであったものの、フロンターレは半分以上がPA外からで、ミドルシュートが多かった。上海上港はセットプレーやカウンターからのシュートが多いものの、PA内からシュートを多く打っており、際どいチャンスをいくつか作っていた。
【PickUpData】地味にとても効いていたオスカル
パススタッツ
引用:SofaScore.com
フッキのパワフルなプレーが目立ってわかりにくかったが、実はとても効いていたオスカル。ファイナルサードで勝負するのはフッキとエウケソンに任せ気味で、中盤でつなぎ役に徹したり、足元に吸い付くキープ力で前進に貢献していた。オスカルはインターセプト3回、タックル成功3回もあり、守備でも貢献していた。
使われなかった”高さ”。コンディションが上がっていない家長
ACLでもボールを支配できたものの、結局はファイナルサードで崩しきれずに最後はPKで失点して敗戦。アウェイで勝ち点1を持ち帰れる可能性は十分にあったものの、結果的にACLの厳しさを味わうことに。PKのシーンは仕方ないと言わざるを得ず、守田を責める必要は全く無いだろう。しかし、セットプレーやカウンターで何度か決定機を作られており、内容的には上海上港の勝利が妥当であったとも考えられる。
スタメンに抜擢した長谷川のドリブルの仕掛けを活かすのであれば、中央で1枚でも可能性を出せるダミアンをもっと使ったほうが可能性が高まったのではないだろうか。わずか数分の出場にとどまったものの、アジアレベルでも高さ・強さは十分に威力を発揮しそうであった。さらに山村もベンチに控えていたものの、出場は無し。馬渡の負傷で1枚使った影響もあるものの、プラスアルファとして今季の陣容に加えられた”高さ”は、この試合では結局使われなかった。
また、家長はキープ力は発揮できるものの、スタミナやスピードを見ると本調子で無いように見え、1対1での突破もほとんど無く、それほど効果的なプレーは見せられていなかった。無理して使い続けず、阿部をスタートから起用する選択でも良かったように思える。
これまでの試合でほとんどスタメンを変えておらず、週末のマリノス戦、翌週のACLとリーグ戦とスケジュールがタイトになる中で、選手起用に変化が生まれるだろうか。いまだ流れの中からの得点がなく、フロンターレらしい崩しきった得点がそろそろ生まれることを期待したい。