上々の仕上がりで締めくくったプレシーズン最終戦。アーセナル 対 バルセロナ レビュー【2019-2020 プレシーズン】
アーセナルのプレシーズン最終戦。バルセロナのホームに乗り込んでの一戦。
Contents
内容は悪くないものの、結果は残念なものに
試合結果
プレシーズンマッチ ジョアン・ガンペール杯
バルセロナ 2-1 アーセナル
36′ オーバメヤン
69′ ナイルズ(OG)
90′ スアレス
主力を並べてプレシーズン最終戦に臨んだアーセナル
ほぼ開幕戦を想定したスタメンとも思える11人を起用したアーセナル。フォーメーションは4-2-3-1。負傷中のラカゼットと合流直後のペペは帯同せず。
対するバルセロナは、おなじみの4-3-3で、若手を織り交ぜつつも主力も多くスタメンに起用。新加入のグリーズマンはトップの位置に。
バルサのハイプレスをかいくぐるアーセナル
序盤からバルセロナはアーセナルのビルドアップに対して前から厳しくプレスをかけてボールを奪おうとする狙い。中盤およびSBにはほぼマンマークで寄せ、パスコースを無くして前でボール奪取を狙う。
アーセナルはGKへのバックパスや前線への意図のないロングパスなどはほとんど選択せず、ショートパスでハイプレスをかいくぐって前進しようとする。
ボールを奪われるシーンもあったものの、徐々に角度を付けたポジショニングとダイレクトパスの連続によってプレスをかいくぐって前進に成功するシーンを増やしていく。2列目の選手もマークされている中、下りてサポートするよりもビルドアップの出口としてなるべくフリーで受けられるように、中央と左右で立ち位置を変えるなどして後方からのパスを引き出そうとした。
前線の選手にボールが渡ると、オーバメヤン、エジル、ネルソンらの縦に早い攻撃で一気にゴール前へ。しかし、バルセロナのDF陣の守備も堅く、簡単にはシュートまでつなげず。
右で作って左からペナルティーエリアに進入するバルセロナ
一方、バルセロナのビルドアップに対して、アーセナルはそれほど前からプレスをかけず、4-4-2のブロックを作って対応。
バルセロナはデ・ヨングがCB間やCB脇に下りて後方で数的優位を作って余裕を持ってボール保持しつつ、後方からの前進はほとんどが右サイドから。
下りてボールを受けようとするデンベレにシンプルに預け、そこからデンベレとセメドのコンビネーションで突破したり、デンベレがカット・インして内側に入ったのちに逆サイドへ展開するシーンを何度も見せた。
また、左IHのプッチが適宜下りてきてボールに絡み、プッチが下りることでムヒタリアンは内側をケアする意識が強くなるため、ピケからサイドチェンジのロブパスで左サイドのスペースのJ・アルバに一気に届けるシーンも。
ファイナルサードまで前進して押し込んだら、左右に大きく展開して揺さぶり、アーセナルのDFのブロックの穴を作ろうとする。
しかし、アーセナルのDF陣がゴール前で粘り強く守り、バルセロナに決定的なチャンスをほとんど作らせず。
オーバメヤンのスーパーゴール
試合が動いたのは36分。レノのキャッチからジャカを起点に素早く中央でパスを繋いで前進すると、ジャカが左サイドに開いたエジルに大きく展開。中央ではオーバメヤンがゴール方向に走り、バルセロナのDF陣も戻ろうとする中、エジルは意表をついた鋭いアーリークロスのようなグラウンダーパスを中央に送ると、オーバメヤンがターンしながら見事なトラップでマイボールに。J・アルバを振り切ったわずかなタイミングでシュートを放つと、ニアの上を突き刺す見事なゴールを奪う。アーセナルが先制に成功する。
試合はそのままアーセナルが1点リードしてハーフタイムへ。
後半も変わらない両チームの狙い
後半開始時、両チームともにメンバーを変更。
アーセナルは、ネルソン、モンレアルに代えて、ゲンドゥージ、コラシナツを投入。ゲンドゥージがボランチに入り、ウィロックはトップ下、エジルは2列目右に移る。
バルセロナは一挙7人の交代。中盤はブスケツ、セルジ・ロベルト、アレニャのトリオに。
後半に入っても両チームのやり方は変わらず。ハイプレスをかけるバルセロナに対して繋いで突破しようとするアーセナル。
50分頃、バルセロナはデンベレが左、ラフィーニャが右に移り、左右を入れ替える。
すると、デンベレのテクニックやキープ力を活かしてシンプルに左から組み立てるシーンが増えていく。
55分頃、バルセロナの前からのプレスが少し弱まり、自陣で4-5-1のブロックで待ち構えるように。アーセナルがボール保持する時間が増えていく。
スアレスとグリーズマンの共演
64分、バルセロナはデンベレ、セメド、J・アルバに代えて、スアレス、ワゲ、ミランダを投入。スアレスがトップ、グリーズマンが左、ラフィーニャが右の3トップの配置に。
基本ポジションはスアレスが中央にいるものの、スアレスがサイドに流れてボールを受け、グリーズマンがゴール前に入るシーンが増えていく。
バルセロナは選手交代で再び活性化し、アーセナルのビルドアップに対して前から厳しくプレスをかけるようになる。アーセナルはエジルが下りてサポートに行くことで前進しようとする。
ゴールが生まれたのはまさかのプレー。69分、ナイルズがこぼれ球をGKにバックパスするも、飛び出していたレノを確認できておらず、バックパスは無人のゴールへ。アーセナルのオウンゴールでバルセロナが同点に追い付く。
70分、アーセナルはエジル、ムヒタリアン、ウィロックに代えて、サカ、マルティネッリ、セバージョスを投入。2列目は左からサカ、セバージョス、マルティネッリの布陣に変更。
バルセロナのプレスをかわして前進し、フレッシュなサカやマルティネッリのスピードを活かしてゴール前まで持ち運ぶシーンが増えていく。セバージョスも華麗なテクニックで前進に貢献。
アーセナルは守備では4-4-2のブロックで待ち構えるやり方は変わらないものの、フレッシュな2列目の選手たちがボールホルダーに食いつきやすく、逆にあっさりと前線にボールを渡されてしまうシーンが目立つように。ゴール前ではスアレスが脅威となる。
すると同点で迎えた90分、押し込みつつもアーセナルのブロックの外でボールを回していたバルセロナであるが、スアレスがCBのあいだのスペースで一気に走り出すと、セルジ・ロベルトがそれに合わせてピンポイントのロブパスを送る。チェンバースに寄せられるスアレスであるが、そのまま後ろから来たボールにダイレクトで合わせてゴールネットを揺らす。土壇場でバルセロナが勝ち越し。
試合は劇的な展開でホームのバルセロナが勝利を収めた。
仕上がりの良さを見せたアーセナル。気がかりな左サイド
プレシーズンマッチの中で明らかに一番強度の高い試合となった。シュート数はバルセロナの10本に対してアーセナルは4本のみではあるものの、バルセロナはミドルシュートも多く、アーセナルが崩されたシーンはそれほど無かったと言える。バルセロナの得点もオウンゴールとスアレスのスーパーゴールであり、引き分けが妥当であったか。
エジルは、”らしさ”溢れるパスによりアシストで貢献。しかし、後半にウィロックがトップ下に入り2列目右に回ると、明らかに覇気が無くなったように見えたのは相変わらず気になるところ。
全体的にプレスをかいくぐって前進できていた点は、チームとして仕上がってきていることを表しているだろう。ファイナルサードの質はシーズン・インしてから期待すれば良い。
またも気がかりなのはモンレアル。守備ではデンベレを相手に翻弄され気味で、攻撃でも左サイドから前進したシーンは明らかに少なく。
ビルドアップに関しては後半にコラシナツが入ってからも左サイドからの前進はうまくいってなかったため、チームとして抱える問題と言えるかもしれない。やはり左利きのCBがいないことが影響しているだろうか。右利きではあるものの、昨季に左CBとしてビルドアップに貢献できることを示したホールディングの復帰が待たれる。
プレシーズンで尻上がりにパフォーマンスを上げたネルソンとマルティネッリ
コロラド・ラピッズ戦以外のすべての試合で出場機会のあったネルソンであるが、はじめ3試合は低調なパフォーマンスに終わったものの、その後の3試合はキレのある動きを見せ、周りとの連携も合ってきて、さらに両サイドともにプレーできることをアピールしたと言えるだろう。
この調子で行けば、低調なムヒタリアンよりもネルソンの序列が上になってもおかしくないかもしれない。特にイウォビやペペのフィットが遅れることを踏まえると、シーズン序盤は確実に出番を得ることができるだろう。
また、マルティネッリはプレシーズン通してそれほど多くの出場時間を与えられなかったものの、ネルソンと同じく尻上がりにパフォーマンスを上げたと言える。この試合でもサイドでの1対1で積極的に仕掛けるプレーを見せたり、中に絞ってペナルティーエリア内で決定機を迎えるシーンも見せた。ペペの獲得、ネルソンの台頭などもあり、サイドアタッカーのポジション争いは厳しいものの、ELなどで多少は出番を与えられるのではないだろうか。
さらに、わずかな出場時間であったものの、セバージョスも確実に好パフォーマンスを披露。
この試合ではトップ下での出場となったが、下りてビルドアップのサポートをしつつ、ファイナルサードでもアクセントを付けるプレーを見せられることをアピール。レギュラーとして定着することもそう遠くないかもしれない。ローンでの加入ながら、中心選手として君臨する可能性もある期待大の選手である。
いざエメリ2年目となる新シーズンへ
主力の多くがプレシーズンでしっかりとコンディションを上げ、さらに想定外のビッグサマーとなり、開幕に向けて悪いニュースはほとんど無いと言えるか。
新戦力やイウォビ、トレイラらの合流が遅く、ベジェリンやホールディングも出場できるまでにもう少しかかりそうであり、シーズン序盤の数試合は限られたメンバーで臨む必要がありそう。それでも、致命的なスカッドとは言えず、ネルソンやウィロックらの昇格組もしっかりと戦力として働いてくれる期待が持てる状況である。
CL復帰を目指し、今後数年間のアーセナルのターニングポイントとなるシーズンがまもなく始まる。
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