エディ・ハウの対応力を質で上回ったアーセナル。アーセナル 対 ボーンマス レビュー【2018/19プレミア第28節】
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試合結果、スタメン、フォーメーション
2019/02/27 プレミアリーグ第28節
アーセナル 5-1 ボーンマス
4分 エジル
27分 ムヒタリアン
30分 ムセ
47分 コシェルニー
59分 オーバメヤン
78分 ラカゼット
両チームとも前回対戦と同じフォーメーションを採用したこの試合。しかし、両チームともに怪我人を多く抱えており、アーセナルは5人、ボーンマスはなんと7人も前回対戦時とスタメンが異なることに。
週末にノースロンドンダービーを控えるアーセナルは、前節と今節でうまくローテーションしている模様。前節のスタメンからリヒトシュタイナー、ジャカ、ラムジー、ラカゼットに代えて、ジェンキンソン、ゲンドゥージ、エジル、オーバメヤンをスタメン起用。
前回対戦の振り返りはこちら
リーグ戦初の3-4-2-1。ボーンマス 対 アーセナル レビュー【2018/19プレミア第13節】
試合経過と両チームの狙い
【前半開始~ 12分】 開始早々の10番の輝き
試合は開始早々から動く。前半3分、アーセナルがボール保持する中、コシェルニーからコラシナツへロングボールが通ると、競り合いでこぼれたボールをコラシナツが前方のエジルへ。フリーでPA内に進入したエジルが冷静にGKの頭上を越えるシュートを放ち、アーセナルが早々に先制。
アーセナルの攻撃とボーンマスの守備
アーセナルのビルドアップ時、ボーンマスはミドルゾーンで4-4-2ブロックを引き、それほど前からプレスはかけず。これに対してアーセナルは、後方で余裕を持ってボールを回しつつ、中でも特に目立ったプレーは、右サイドに展開した後に中央に戻しつつ、ゲンドゥージがボーンマスの2トップ脇でうまくボールを受け、そこからサイドのコラシナツやハーフスペースのエジルにパスを通す形。
アーセナルの攻撃
- 【定位置攻撃】 ゲンドゥージがボーンマスの2トップ脇から展開
ボーンマスの守備
- 【守備ブロック】 ミドルゾーンにリトリートし4-4-2ブロック
ボーンマスの攻撃とアーセナルの守備
ボーンマスのビルドアップ時、アーセナルはラインを高めにして前からプレスをかける形。ボーンマスのボランチに対してアーセナルのボランチ2人が積極的に前に出て前を向かせず。ボーンマスは前進に苦しみ前線へのロングボールを選択する場面が増えるが、前線の競り合いではアーセナルのCB陣が強さを見せ、効果的な展開はできなかった。
ボーンマスの攻撃
- 【定位置攻撃】 ショートパスを繋げない場合は前線へロングボール
アーセナルの守備
- 【守備ブロック】 3-4-3でラインを高くして前からプレス
【13分~前半終了】システム変更で攻守に改善を図るボーンマス
攻守においてうまくいかないボーンマスは前半13分頃に早くもシステム変更。2トップの一角であったキングが左サイドに移り4-3-3(守備時:4-1-4-1)に。
ボーンマスの攻撃とアーセナルの守備 ※システム変更後※
システム変更により、ボーンマスはビルドアップ時にIHのゴスリングとフレイザーのポジショニングによってアーセナルのボランチをピン留めして前へのプレスを抑制し、アンカーのサーマンがフリーになりやすい状況を作った。
サーマンがCB or SB経由でボールを受けられるようになり、1stプレスラインを突破するシーンを増やした。前進に成功すると、サイドからファイナルサードに進入することを狙った。
ボーンマスの攻撃 ※システム変更後
- 【定位置攻撃】 アンカーのサーマンを経由して前進しサイド攻撃
アーセナルの攻撃とボーンマスの守備 ※システム変更後※
さらにボーンマスは守備でも、システム変更により噛み合わせが良くなり、IH2人がボランチ(ゲンドゥージ、トレイラ)を厳しくマークし、両サイドはWB(コラシナツ、ジェンキンソン)へのパスコースを消しながら3バックの両脇(モンレアル、パパスタソプーロス)にプレスをかける形。さらに両SBも積極的に前に出てWBにプレスをかける。
これにより、アーセナルは自陣から前進できずにプレッシャーが厳しい状態でパスを回すシーンが増える。
しかし、次第に【ボランチ→WB→1.5列目】とダイレクトでパスを繋ぐことで前進するシーンを増やしていく。アンカーのサーマンがアーセナルの1.5列目の2人がボールを受ける動きをケアしようとするものの、エジルもムヒタリアンもポジショニングがうまく、プレッシャーを受けている状態でパスをもらってもボールコントロールが上手くてボールを失わず。
プレスを突破してしまえば敵陣の広大なスペースで3対3や3対4の状態となり、一気にゴール前まで運ぶシーンを作っていた。
アーセナルの攻撃 ※システム変更後
- 【定位置攻撃】 ボランチ→WB→1.5列目とダイレクトでパスを繋いでプレスを突破
ボーンマスの守備 ※システム変更後
- 【守備ブロック】 4-1-4-1でラインを高くして前から連動してプレス
試合は26分、ボーンマスの後方でのビルドアップのシーンでムヒタリアンがパスカット。PA右に走り込んだエジルにパスを出すと、飛び出したGKに対してエジルは冷静にムヒタリアンへリターンパス。これをムヒタリアンがダイレクトでゴールに突き刺し、アーセナルが追加点を奪うことに成功。
しかし直後の29分、アーセナルがGKからのビルドアップ時、下りてきてレノからボールを受けたゲンドゥージがゴスリングの厳しいプレスにあいボールロスト。ゴスリングはPA内で冷静に中に折り返して最後はムセのフィニッシュ。ボーンマスが1点返すことに成功。
試合はその後、両チームともに決定機を作れず、アーセナルが2-1でリードして前半を折り返す。
前半のスタッツ
前半のスタッツ(左:アーセナル、右:ボーンマス)
引用:SofaScore.com
前半、アーセナルがボール保持するシーンが多かったものの、シュート数はアーセナルの6本に対してボーンマスの5本と差はなく。また、ビッグチャンス数も両チームともに1回ずつ。
【後半開始~55分】質の高さで上回り続けるアーセナル
【56~57分】ボーンマスのさらなる変更による改善
アーセナルの攻撃とボーンマスの守備 ※システム”再”変更後※

【57分~試合終了】ボーンマスを無効化したアーセナル
しかしわずか1分後にアーセナルが選手交代によりフォーメーション変更。
57分:【アーセナル】コラシナツ → イウォビ
フォーメーションを4-2-3-1に変更し、イウォビは2列目左に入る。
エメリとしては、ボーンマスの狙いをあらかじめ想定した上での対応であった可能性もあるし、単純に週末のノースロンドンダービーへ向けてコラシナツを早めに下げたのかもしれない。
アーセナルの攻撃とボーンマスの守備 ※アーセナル変更後※
この変更により、噛み合わせて前からハメたいボーンマスに対して後方で数的優位を作れるようになるアーセナル。ボーンマスはそれでも前からのプレスを強め続けるが、逆に中盤より前と最終ラインの間が間延びしてしまい、これまで以上にスペースをうまく使われて縦に早い攻撃を許すことに。
すると直後の58分、カウンターでムヒタリアンのスルーパスを受けたオーバメヤンが最終ラインを一気に抜け出し、GKとの1対1でもGKを冷静にかわして追加点に挙げることに成功。
63分:【アーセナル】ムヒタリアン → ラカゼット
ラカゼットがトップに入り、オーバメヤンが2列目右に移る。
69分:【ボーンマス】スミス → リコ
70分:【アーセナル】オーバメヤン → デニス・スアレス
その後もアーセナルが優勢に進めつつボーンマスが体力を消耗していく中、迎えた77分。PA手前からのアーセナルのFK。珍しいラカゼットのFKのシュートは壁を越えてキレイにゴール左隅に吸い込まれる。アーセナルがダメ押しの5点目。
79分:【ボーンマス】フレイザー → サリッジ
そのままアーセナルがボーンマスを寄せ付けず快勝を収めた。
後半のスタッツ
後半のスタッツ(左:アーセナル、右:ボーンマス)
引用:SofaScore.com
後半もシュート数は大差なく、アーセナルの10本に対してボーンマスは8本。しかし、枠内シュートはアーセナルの7本に対してボーンマスは3本のみ。両チームともにポスト・バー直撃のシュートが1本ずつあった。
【PickUpData】大きな差が出た決定力の違い
マッチスタッツ(左:アーセナル、右:ボーンマス)
引用:SofaScore.com
試合を通して見ても、アーセナルはビッグチャンス数が2回のみにも関わらず5得点。ゴール前での決定力の高さを示した。
平均ポジション(左:アーセナル、右:ボーンマス)
引用:whoscored.com
攻撃サイド(左:アーセナル、右:ボーンマス)
引用:whoscored.com
ヒートマップ(左:アーセナル、右:ボーンマス)
引用:whoscored.com
アーセナルはエジルが左サイド寄りでプレーすることが多く、そこを上手く起点にしていたことがわかる。対するボーンマスは、ファイナルサードにあまり進入できていなかったことがわかる。
ゴール期待値、パスマップ
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— Between The Posts (@BetweenThePosts) 2019年2月28日
【ゴール期待値】
アーセナル:2.79点
ボーンマス:0.89点
実際の得点差ほどゴール期待値に差は無かった。アーセナルがビッグチャンスではないシーンでも高い決定力でゴールを奪ったことを表していると言える。
【PickUpData】圧巻のパフォーマンスを披露したエジルとムヒタリアン
エジルとムヒタリアンのスタッツ
引用:SofaScore.com
アーセナルの攻撃を牽引したエジルとムヒタリアン。
エジルが1G1A、ポスト直撃のシュート1本、キーパス4本、パス成功率96.9%で、ムヒタリアンも1G2A、キーパス4本という圧巻のパフォーマンスを披露。
エジルのパス
※緑:成功、赤:失敗
引用:Arsenal公式
65本のパスを出したエジルは、失敗したパスがわずかに2本。しかもそのうちの1本はPA内のものである。ビルドアップで低めに下りてきたシーンが多かったわけでもなく、多くのパスがファイナルサードでのものである。
今後のビッグマッチを前にして、間違いなくコンディションが上がってきていると言えるだろう。
エディ・ハウの対応力の素晴らしさ
41歳ながらすでにボーンマスの監督を7シーズン連続で務めているエディ・ハウ。イングランド代表監督やアーセナルのヴェンゲルの後任候補として噂された期待の若手監督は、この試合でも素早いシステム変更で試合の流れを変えようとした。
結果的にはアーセナルの質の高さによって大差が付いたが、怪我人が多発している状況が無ければ試合結果は全く異なるものになっていたかもしれない。
次節はアウェイでのノースロンドンダービー
調子を上げてきたアーセナルは、週末にアウェイでノースロンドンダービー、さらに翌週にはEL・レンヌ戦、マンチェスター・ユナイテッド戦を控える厳しい日程。リーグでの4位争いを左右する非常に重要な時期となりそうである。
ノースロンドンダービーでトッテナムを敗れば3位も視界に捉えることができる状況の中、最高のパフォーマンスを発揮することができるだろうか。そしてエジルに出番は訪れるだろうか。
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