左サイドの攻撃に苦しめられながらもクリーンシート。アーセナル 対 ワトフォード レビュー【2018/19プレミア第7節】
公式戦6連勝中のアーセナルは、順位が1つしか変わらない好調なワトフォードとの対戦。
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試合結果とフォーメーション
2018/09/29 プレミアリーグ第7節
アーセナル 2-0 ワトフォード
81分 OG
83分 エジル
アーセナルは、ここ数試合でお馴染みとなったメンバーをスタメン起用。ワトフォードは前線に強力なディーニーを擁する。
【PickUpData】左サイド偏重を少し変えたアーセナルの攻撃
マッチスタッツ(左:アーセナル、右:ワトフォード)
引用:SofaScore.com
シュート数、枠内シュート数ともに、ワトフォードがアーセナルを上回っている。しかし、ワトフォードのビッグチャンスが6回ありながらも、すべて失敗。アーセナルは、ビッグチャンスが3回ながら、2得点を奪い勝利。
アーセナルがいかに苦しみながらも、最後の最後で守りつつ、少ないチャンスをものにしたことを表している。
平均ポジション(左:アーセナル、右:ワトフォード)
引用:whoscored.com
ラムジー(8)、エジル(10)、オーバメヤン(14)がほぼ重なってしまっている。重なった要因については後述。
ワトフォードは、右サイド(19,23)に比べて、左サイドのペレイラ(37)とホレバス(25)がかなり高い位置を取ってる。
攻撃サイド(左:アーセナル、右:ワトフォード)
引用:whoscored.com
ヒートマップ(左:アーセナル、右:ワトフォード)
引用:whoscored.com
攻撃サイドのデータを見ると、左サイド偏重はこれまでと変わっていないものの、ヒートマップを見ると、左サイドの主にジャカが起点にしてきたエリアがここ最近の試合ほど使えなかったことを表している。
ボランチのプレーエリア(ワトフォード戦)
引用:SofaScore.com
【参考】ボランチのプレーエリア(エバートン戦)
引用:SofaScore.com
ジャカとトレイラのプレーエリアについて、ワトフォード戦と前節エバートン戦を比べるとわかりやすいが、ジャカ、トレイラともに、この試合ではプレーエリアが左右に広がっている。
これは、前半の半ばと後半の半ば辺りにジャカとトレイラの左右の立ち位置を入れ替える時間帯がそれぞれ10分ほどあり、組み立てがうまく機能しない中で状況を打破するために、やり方を変えていたように思える。
また、ワトフォードの左サイドの攻撃が驚異となっており、アーセナルが左サイド偏重の攻撃時にカウンターを受けると、ワトフォードの左サイドのスペースを一気に使われてしまうため、それを予防する意図もあったかもしれない。
さらにこれまで、2列目の選手は攻撃時に、オーバメヤンがPA内に入り、ラムジーが左サイドを使い、エジルが中央を使うシーンが多かったが、この試合でも基本の形は変わらないものの、ラムジーが右サイドを使う場面がこれまでの試合よりも多く見られた。平均ポジションでオーバメヤンとラムジーとエジルが重なっていたのはこれが要因だろう。
ボランチの左右の立ち位置と2列目の選手の動きを少しアレンジしてきており、エメリが新たなやり方を試し始めたのかもしれない。
【PickUpData】パパスタソプーロス不在の穴を埋めたホールディング
アーセナルの守備スタッツ
引用:whoscored.com
負傷離脱中のパパスタソプーロスに代わってスタメン起用されたホールディングが、前節の途中出場に続き、安定したパフォーマンスを発揮。ディーニーを相手にしながらも、インターセプト3回、クリア6回という堂々のプレーを披露した。
シーズン前はCBの層の薄さが懸念されていたものの、懸念を払拭する活躍を見せている。マヴロパノスも負傷離脱中であるため、ELやカップ戦含めて、ホールディングの出番は多くあるだろう。
【PickUpData】驚異となったワトフォードの左サイドの攻撃とボランチの守備
ワトフォードのパススタッツ
引用:whoscored.com
ワトフォードは左サイドをストロングポイントとしており、左MFのペレイラはサイドアタッカーながらリーグ戦これまでに3ゴール、左SBのホレバスはリーグトップタイとなるアシスト数4を記録している。
この試合でもワトフォードの左サイドは威力を発揮し、ホレバスはキーパス数3回、クロス15回を記録し、アーセナルを苦しめた。
結果的には2試合連続でクリーンシートを達成したものの、エバートン、ワトフォードと、左サイドをストロングポイントとするチームと連続で対戦し、左サイド偏重で組み立てるアーセナルにとっては、ボールロスト時にカウンターを受けやすい、苦しい内容が続くこととなった。
ワトフォードの守備スタッツ
引用:whoscored.com
ワトフォードのボランチコンビにもアーセナルは苦しめられ、特にキャプーは、インターセプト5回、クリア4回を記録。
アーセナルは中央のエリアを有効に使えず、苦戦することとなった。
クリーンシートに貢献したレノ
チェフの肉離れによって前半ラストから出場したレノ。リーグ戦でようやく出番を得ることとなったが、好パフォーマンスでクリーンシートに貢献。チェフが数試合は欠場することが濃厚であるため、アピールしてスタメンを奪う絶好の機会が訪れたと言えるだろう。
今季ビッグセーブで何度もチームを助けているチェフの貢献度は揺るがないものであるものの、足元でつなごうとするビルドアップでは不安も見せており、レノはセーブ以外の面でもチームにプラスとなる可能性を秘めている。
近い将来にGKの世代交代が必要なアーセナルにとって、このタイミングでレノを一定の試合で起用する機会が訪れたことはプラスになるのではないだろうか。
イウォビの好パフォーマンスとオーバメヤンのサイド起用の是非
途中出場が多いながらも、好パフォーマンスを続けて披露しているイウォビ。この試合でも、1点目を誘発したほぼアシストと言っていいクロスに、2点目でも起点として絡む動きを見せて、勝利に貢献した。
2列目はオーバメヤン、ラムジー、エジルという並びでスタメンを固定しているものの、うまく機能しているとは言い難く、そろそろメンバー変更を試してもいいのではないだろうか。
やはり、オーバメヤンの左サイド起用は活躍できるシーンが限定的となり、試合全体を通して見ると、それほどプラスになっていないと思われる。ラムジーのトップ下も、守備時のプレスでは有効かもしれないが、攻撃時にはポジショニングが迷子になっており、良さを発揮できていないように思える。
好調なイウォビやベンチが続いているムヒタリアンをスタメン起用し、エジルをトップ下で試してもいいのではないか。トップは万能性で潤滑油となりつつも決定力のあるラカゼットが現時点ではファーストチョイスでよいはずであり、オーバメヤンは途中出場でも、快速や決定力を活かしてチームに貢献できるはずである。
ラムジーの契約更新破断の噂もあり、前線のファーストチョイスや戦術に変化が生まれるのか、今後に注目したい。
公式戦7連勝を飾り、上昇ムードのアーセナル
開幕2連敗のあと、カップ戦とELを含めて7連勝を飾り、9月を全勝で乗り切ったアーセナル。リーグ戦も5位に浮上。11月頭のリバプール戦が1つのポイントとなるはずであり、それまで好調を維持しつつ、チームの成熟度を高めたい。
まだまだ改善すべき点は多いが、ここからがエメリの腕の見せ所となるだろう。
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