結果を左右するボランチのパフォーマンス。アーセナル 対 ウエストハム レビュー【2018/19プレミア第3節】
未勝利同士で迎えたロンドンダービー、アーセナル対ウエストハムの一戦。
ウエストハムには、ウィルシャー、ルーカス・ペレス、ファビアンスキがおり、元アーセナルの選手が古巣のホーム凱旋となる。中でも、アーセナルで10番を背負っていたウィルシャーにとっては特別な試合となる。
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試合結果とフォーメーション
2018/08/25 プレミアリーグ第3節
アーセナル 3-1 ウエストハム
25分 アルナウトビッチ
30分 モンレアル
70分 ディオップ(OG)
92分 ウェルベック
PickUpData:常に高い位置を取ったベジェリン
平均ポジション(左:アーセナル、右:ウエストハム)
引用:whoscored.com
ヒートマップ(左:アーセナル、右:ウエストハム)
引用:whoscored.com
90分通して、高い位置を取り続けて攻撃に絡んだベジェリン。前節のチェルシー戦でも、何度も高い位置に進入してマイナスのクロスを上げる場面を作っており、エメリの戦術として意図的にやっているのだろう。
ヒートマップを見ても、明らかに右サイドの高い位置が一つの起点となっていることがわかる。
しかし一方で、ウエストハムの平均ポジションを見ると、左サイドの30番アントニオが高い位置を取っており、ベジェリンの空けたスペースを狙っていたことが伺える。実際、何度もアーセナルの右サイドのスペースから攻撃を仕掛けられていた。
PickUpData:ムスタフィの奮闘
守備スタッツ(アーセナル)
引用:whoscored.com
それほど印象には残っていなかったが、この試合のクリア数を見ると、ムスタフィのクリア数が14回という驚異の数値を記録している。
これは、ベジェリンが空けた右サイドのスペースを使われて相手の攻撃を許しながらも、いかにムスタフィがしのぎ続けたかを表していると言えるだろう。
PickUpData:トレイラ投入でバランスを取り戻した
パススタッツ(アーセナル)
引用:whoscored.com
パススタッツを見ると、後半から入ったトレイラがパス成功率で94%を記録しトップ。ゲンドゥージも90%であり低くない数値であるものの、トレイラがよりビルドアップなどでチームの攻撃を安定させたと言える。
ジャカについては、後半のトレイラ投入が好影響となってパフォーマンスが改善したが、総パス数が多いとはいえ、もう少しパス成功率が上がってほしいものである。ロングパスが持ち味とはいえ、それほどアグレッシブなパスを多く出している印象はなく、ビルドアップ時の簡単なパスミスがいまだに一定数あるという印象が強い。
低調すぎた前半のゲンドゥージとジャカ。ボランチの最適コンビは?
シティ戦、チェルシー戦に続いてスタメン起用されたゲンドゥージとジャカ。ゲンドゥージについては、注目を集めるべきパフォーマンスを披露しているため、継続起用されることに驚きはないが、ジャカについては、これまでのパフォーマンスは明らかに物足りなく、継続起用されていることに疑問の声が多い。
この試合の前半、ゲンドゥージが過去2試合とは程遠い出来であり、さらにジャカも相変わらず低調なパフォーマンスとなった。この試合でも継続してGKからロングボールは使わずにつないでいく意図が見受けられたものの、ボールを前に運べないシーンが目立ち、両CBがワイドに開いてスタートポジションを取っているにも関わらず、チェフがしびれを切らしてロングボールを前線に蹴ってしまうシーンも見られた。
後半にゲンドゥージに代わりトレイラが入ると、これは徐々に改善されていき、攻守ともに安定感が増した。さらには、ジャカも自分のプレーしやすいポジショニングを見つけ出し、チーム全体のパフォーマンスが改善された。
やはり、ボランチのファーストチョイスは、攻守のバランス感覚に優れるトレイラであるべきであろう。守備能力が優れたボランチが他にいない点も含めて、トレイラを外す選択肢は考えられない。トレイラを軸として、ゲンドゥージとジャカのどちらがコンビとしてよりフィットするのかを模索していくべきである。
プレシーズンにジャカとトレイラがほとんど合流できず、ボランチのユニットをほとんど試せなかったのがここにきて響いているのだろう。さらに、トレイラにとってはプレミア初参入であり、未知数の部分が多い影響で、エメリもスタートから起用するのをためらったはずである。しかし、そろそろ序列を見直すデータが集まったはずであり、トレイラをボランチの軸としていくことが、今後のアーセナルにとっては必要不可欠となるはずである。
エメリのベジェリンの評価は高いのか?
ここまで3試合ともスタメンフル出場しているベジェリン。しかし、ここ数シーズン、そして今夏のプレシーズンも、守備の危うさと攻撃での選択肢の少なさと精度の低さで、ずっと低調なパフォーマンスを続けている。
満を持して経験豊富なリヒトシュタイナーを獲得したため、右SBの序列が変わるかとも思われたものの、ここまではその傾向は無し。確かに、リヒトシュタイナーはプレシーズン終盤に初合流し、プレミアへも初参入であることから、フィットするのに時間がかかるという見方もあるだろう。しかし、プレシーズン最後のラツィオ戦や、シティ戦でのスクランブルの左SB起用でも、攻守に安定したプレーを見せるだけでなく、闘争心を前面に表し、チームを鼓舞することもできるプレーヤーであることを見せつけている。
エメリはSBを高い位置でプレーさせる意図を持っているように見え、守備の安定よりもその点にフォーカスして、ベジェリンをリヒトシュタイナーよりも重視しているのかもしれない。しかし、リヒトシュタイナーはクレバーな選手であり、決して攻撃が不得意でもなく、効果的な絡みを見せつつも、ベジェリンに見られるような不用意なミスでボールを失うこともないはずである。
ここまでの3試合がベジェリンを見極めるテストであり、今後の試合ではリヒトシュタイナーにもより出場機会が与えられることを願いたい。
ラカゼット、トレイラ、リヒトシュタイナーはスタメンで起用すべき
この試合ではエジルが体調不良により欠場し、ラムジーが代わりにスタメン起用されたが、前線4枚の組み合わせはいまだ模索中といったところだろう。ラカゼットの投入により攻撃が活性化されたのは間違いなく、やはり前線の選手たちの攻撃力を活かすためには、ラカゼットの万能性は必須であるように思える。
ポストプレーに優れ、状況に応じてサイドに流れて起点になり、周りを活かすパスも出せて、自身の決定力も高い。こんな選手を使わないのは明らかにもったいないと言える。ラカゼットとオーバメヤンが共存できるかどうかに限らず、トップのポジションのファーストチョイスはラカゼットにしたほうが、より安定した攻撃を繰り広げることができるのではないだろうか。
これまでの3試合は、エメリのとって、1つのテストのフェーズであったと考えることもできる。エメリにとって新チーム、新リーグでの采配であり、選手のコンディションもバラバラである中、目の前の試合に向かうことと同時に、中期的にテストすることも重要だろう。
その意味では、そろそろ振り返りを活かしてテコ入れしてもおかしくなく、そうなるとスタメンに変化が表れるかもしれない。明らかに期待値が高いのは、ラカゼット、トレイラ、リヒトシュタイナーのスタメン起用である。戦術の浸透度を上げていくことも重要であるが、パフォーマンスの優れた選手を起用するのも間違いなく重要である。
今後のエメリの采配の変化に期待したい。
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