リーグ戦初の3-4-2-1。ボーンマス 対 アーセナル レビュー【2018/19プレミア第13節】
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試合結果とフォーメーション
2018/11/25 プレミアリーグ第13節
ボーンマス 1-2 アーセナル
30分 OG(レルマ)
46分 キング
67分 オーバメヤン
前半
【ボーンマス】基本:4-4-2 守備:4-3-3
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:3-4-3(5-4-1)
アーセナルはリーグ戦で初めて3-4-2-1を採用。ELでは機能しなかったものの、その後の戦術浸透度が試される。
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序盤からボーンマスが勢いを見せると、7分にブルックスがゴールネットを揺らすものの判定はオフサイド。その後徐々にアーセナルも攻撃を仕掛け始め、トレイラのミドルシュートがポスト直撃する場面も。
迎えた29分、中盤でボール奪取したアーセナルが左サイドに展開すると、コラシナツの折返しをレルマがクリアしようとしたボールが豪快にゴールネットに突き刺さり、オウンゴールでアーセナルが先制する。
アーセナルリードで迎えた前半ロスタイム、アーセナルが押し込んでいるところでボーンマスがボールを奪うと、一気にカウンターを仕掛けて、前線4人の見事な動きで崩しきり、最後はキングが決めて同点に。
同点で前半を折り返す。
アーセナルのビルドアップとボーンマスの守備
アーセナルの低めでのビルドアップ時、ボーンマスはアーセナルの3バックに対して同数プレスをかけてきた。これにより低めからボールを繋いで揺さぶる展開は困難になり、レノからのロングボールも多くなった。高さの競り合いに強い選手が乏しい(強いて言えばオーバメヤンとコラシナツくらい)アーセナルは苦戦する。
しかし、中盤ではボーンマスが3枚しかおらず、均等にポジショニングするというよりはアーセナルの左サイド寄りにマークする形になり、ベジェリンが比較的フリーとなるシーンが多くなった。フレイザーが走力を活かしてムスタフィにプレスを掛けつつベジェリンもチェックしようとするものの、アーセナルはうまくつないでベジェリンにボールを入れて前進に成功し、ダニエルズとの1対1やムヒタリアンとアケを含めた2対2のシーンを作ることでゴール前に迫った。
ボーンマスのビルドアップとアーセナルの守備
ボーンマスはビルドアップ時にCBが開き気味で、ゴスリングが少し落ちてサポートしたりするものの、アーセナルは前から3枚、中盤から4枚が積極的にプレスをかけて、後方でボールを自由に繋げない状況を作った。
しかしこれに対してボーンマスは、PA脇のスペースにキングやウィルソンが走り込んでボールをキープして起点を作り、その間にフレイザーやブルックスが前線に走り込んでゴールを狙う形を作った。
前半のスタッツ
前半のスタッツ(左:ボーンマス、右:アーセナル)
引用:SofaScore.com
アーセナルはシュート10本、枠内シュート3本。トレイラのミドルシュートがポスト直撃などがあったものの、ゴールは相手のオウンゴールの1点のみ。対するボーンマスは、シュートは4本に留まったものの、前半ロスタイムに見事なカウンターを決めきって同点に追いついた。
後半開始~71分
【ボーンマス】基本:3-4-2-1 守備:3-4-3(5-4-1)
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:3-4-3(5-4-1)
ボーンマスは後半開始からフォーメーションを変更し、アーセナルと同じ3-4-2-1とした。フレイザーが右サイドに移り、ブルックスはシャドーに入った。
ボーンマスのフォーメーション変更により、両チームのフォーメーションが噛み合わせとなり、すべての局面でマッチアップが明確となった。前半にベジェリンをフリーにしていた点を改善するための変更かもしれない。
これにより、球際が激しい展開となるものの、個の力で上回るアーセナルがプレスを受けながらも後方からダイレクトパスやレイオフを駆使して前進する場面が増える。
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迎えた67分、中盤でファールを受けたアーセナルが素早いリスタートで左ハーフスペースに位置するイウォビにボールを預けると、見事なスルーパスをDFの間に通し、最後はコラシナツの折返しにオーバメヤンが詰めてゴールネットを揺らす。アーセナル勝ち越し。
72分~
【ボーンマス】基本:4-4-2 守備:4-3-3
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:3-4-3(5-4-1)
72分、ボーンマスはブルックスとゴスリングに代えて、スタニスラスとL・クックを投入。フォーメーションを4-4-2に戻す。
80分以降、レルマのミドルシュートがポストに当たるなど、1点ビハインドのボーンマスが猛攻を見せるものの、アーセナルが守りきって勝利を掴んだ。
後半のみのスタッツ
後半のスタッツ(左:ボーンマス、右:アーセナル)
引用:SofaScore.com
ボーンマスは後半、シュート7本、枠内シュート3本と盛り返したもののゴールにつなげられず。逆にアーセナルはシュート10本に対して枠内シュートはゴールした1本のみ。
【PickUpData】枠内シュートはボーンマスが上回る
マッチスタッツ(左:ボーンマス、右:アーセナル)
引用:SofaScore.com
枠内シュートはボーンマスが上回り、両チームともにポスト直撃のシュートが1本ずつ。ビッグチャンスはアーセナルの1回のみであり、逆のスコアになっていてもおかしくない内容であったと言える。
平均ポジション(左:ボーンマス、右:アーセナル)
引用:whoscored.com攻撃サイド(左:ボーンマス、右:アーセナル)
引用:whoscored.com
アーセナルは、前半は右サイド、後半は左サイドからの攻撃が多くなった。右サイドからの攻撃では、ベジェリンが早めにクロスまで持ち込むシーンが多く、左サイドではコラシナツとイウォビの連携によって崩そうとするプレーが多かった。
ヒートマップ(左:ボーンマス、右:アーセナル)
引用:whoscored.com
アーセナルは全体的に均等なヒートマップとなっているものの、トレイラとコラシナツのポジションのプレーが割合が少し多くなっている。PA内中央に進入できていないのとPA手前からのミドルシュートが多かったことが関連しているように思える。
ボーンマスは惜しいシーンを作ったものの、PA内にはあまり進入できていない点がゴールまであと一歩届かなかった点を表していると言える。
【PickUpData】精度が足りなかったムヒタリアン
アーセナルの攻撃スタッツ
引用:whoscored.com
ムヒタリアンのシュート
引用:Arsenal公式
ムヒタリアンがシュート7本ながら、枠内シュートはそのうち1本のみ。キーパス2本含め、最終局面での攻撃に関与しているのは間違いないものの、精度が足りなかったと言える。
イウォビの活躍もあり序列が下がっているが、もともとゴールに絡むことができる選手であるはずであり、今後のさらなる奮起に期待したい。
【PickUpData】ゴール期待値はほぼスコア通り
Bournemouth vs Arsenal Running xG. It was ugly early but Arsenal did enough in the second half to survive. pic.twitter.com/8U7t3frx0r
— Scott Willis (@oh_that_crab) 2018年11月25日
ゴール期待値は、アーセナルが2.0点に対してボーンマスが0.7点。オウンゴールがあったものの、ほぼスコア通りの数値となった。
3-4-2-1は今後のオプションとなるか
レギュラーメンバーで初めて3-4-2-1を採用したこの試合。勝利に終わったものの、内容としてはギリギリ及第点といったところだろうか。代表ウィーク中にオプションの成熟度を高めた成果を試合で試したいという思惑かもしれない。
現状のスカッドを踏まえると、コシェルニーとマヴロパノスが離脱している中での3バックの採用に疑問は残る。しかし、モンレアルが負傷離脱しており左SBに本職はコラシナツしかおらず、SBでのコラシナツのパフォーマンスが低調であることを踏まえて、より攻守にダイナミックにプレーできるWBでの起用でコラシナツの良さを引き出したい意図があったかもしれない。
また、前線ではシャドーにイウォビとムヒタリアンが起用され、エジルはベンチで温存されて出番がなかった。エジルはコンディション不良ではないため、今後のビッグマッチ2連戦へ向けた温存かもしれない。また、パフォーマンスの上がらないムヒタリアンの奮起を促すエメリなりの起用法とも考えられる。
ヴェンゲル時代の3-4-2-1でもエジルはシャドーで起用されており、プレーの特徴を踏まえても、クラシックな10番タイプではなく、ハーフスペースやサイドを状況に応じてうまく使うことのできるエジルはこのポジションでも十分なパフォーマンスを発揮できるだろう。
ビッグマッチ2連戦がシーズン折り返し前のターニングポイント
これで公式戦17試合連続無敗をキープ。次節はホームでトッテナムとのノースロンドンダービー、その次はアウェイでマンチェスター・ユナイテッドとの対戦となる。
リバプール戦で結果は引き分けでありながらもBIG6相手に戦えることを示したアーセナルであるが、それ以降、内容は少し低迷している。
”本物”であることを示したアーセナル。アーセナル 対 リバプール レビュー【2018/19プレミア第11節】
基本フォーメーションとしてきた4-2-3-1でのオーバメヤンの左サイド起用もベストとは言えず、4-3-1-2や3-4-2-1をオプションとして試しつつある。ビッグマッチ2連戦で、エメリはどのような采配を見せるだろうか。
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