4-5ブロックの攻略失敗。ブライトン 対 アーセナル レビュー【2018/19プレミア第19節】
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試合結果とフォーメーション
2018/12/26 プレミアリーグ第19節
ブライトン 1-1 アーセナル
7分 オーバメヤン
35分 ロカディア
前半
アーセナルは、ここ最近増えている3センターを採用し、4-3-1-2の布陣。対するブライトンは、4-5-1の布陣。
序盤からアーセナルがボールを保持する展開となる。すると7分、相手陣内深くでたびたびボールを奪うと、ラカゼットがPA内で数人に囲まれながらもキープし、最後はPA左でフリーになっていたオーバメヤンへパス。オーバメヤンはダイレクトでゴールネット右上に突き刺し、アーセナルが先制に成功する。
その後もアーセナルがボールを保持する展開が続くも、35分、アーセナルの左CKのボールが流れてプレパーに渡ると、前線の広大なスペースへロングパス。リヒトシュタイナーが戻りながらヘディングで逸らそうとするものの、逆にゴール前へ絶好のパスに。ロカディアがレノを交わしてゴールネットに冷静に押し込む。ブライトンが同点に追いつく。
その後もアーセナルがボールを支配したものの、ブライトンの守備ブロックを崩せず、1‐1の同点で前半を折り返す。
アーセナルのビルドアップとブライトンの守備
アーセナルのビルドアップ時、ブライトンは4-5-1の守備ブロックを敷き、特に中盤の5枚は狭い距離感で中央のパスコースを封鎖し、サイドにボールが渡ればボールサイドにスライドし、前進を防ごうとした。
これに対してアーセナルは、エジルがサイドに張ったり低めに下りたりして自由に動くことで相手の中盤のバランスを乱してギャップを作ろうとした。また、少しでもギャップができれば、ラカゼットがブライトンの中盤のすぐ背後で縦パスを受けるポジショニングを取る意図が見えた。
なかなか崩せないアーセナルであったものの、ショートパスでの前進だけにとらわれず、オーバメヤンが左サイド寄りから斜めにDF裏のスペースに走り込んでそこへロングパスを通す攻撃を見せ、実際に2回決定機を作っていた。
また、内側に絞りがちであったブライトンのSBの脇のスペースへのロブパスでファイナルサードへ進入する狙いも見せ、アーセナルのSBが高い位置でボールを受けるシーンも作っていた。
前半のスタッツ
前半のスタッツ(左:ブライトン、右:アーセナル)
引用:SofaScore.com
終始ボールを保持したアーセナルは前半でポゼッション率70%とするも、シュートはブライトンと同じ6本のみで、ビッグチャンスは1回のみとなった。
後半開始~61分
62分~69分
アーセナルのビルドアップの変化

70分~
70分、アーセナルはコシェルニーに代えてナイルズを投入。3-4-2-1に変更し、ジャカを左CBとする。
アーセナルのビルドアップの変化
アーセナルは3バックに変更したことで後方の枚数が1枚増えてしまったものの、よりサイド寄りに開いたポジショニングをしやすくなったことで、サイドライン際でのパスがスムーズに通しやすくなり、WBが高めでボールを受けるシーンを増やしていった。
また、後方の数的優位で余裕を持ってボールを持てるようになったことで、中盤の狭い5枚の間への鋭い縦パスを狙いやすくなり、うまく通して突破する場面も見られるようになった。
しかし、ファイナルサードでの質が伴わず、アーセナルはシュートまでなかなか結び付けられず。
最後までブライトンのカウンターの脅威に晒され、攻撃でも見せ場を作れず、1-1のドローで試合を終えた。
後半のスタッツ
後半のスタッツ(左:ブライトン、右:アーセナル)
引用:SofaScore.com
メンバー変更やフォーメーション変更を積極的に行ったアーセナルであるものの、むしろ前半よりも内容が悪化した後半は、シュートわずか1本のみに終わる。ブライトンはスタッツではビッグチャンスは0個であるものの、かなり際どいチャンスを数回作っており、シュート6本のうち4本をPA内で打っていた。
【PickUpData】試合を通じて堅守速攻をやり抜いたブライトン
マッチスタッツ(左:ブライトン、右:アーセナル)
引用:SofaScore.com
アーセナルがボールを保持する時間が長かったにも関わらず、シュート数はブライトンが12本でアーセナルが7本に終わり、ブライトンの狙い通りの展開になったと言える。アーセナルは中央を封じられてサイドからの前進が多くなったものの、クロスは17本のうち成功が2本のみ。サイドからの攻撃の精度が高ければ違った結果になっていたかもしれない。
平均ポジション(左:ブライトン、右:アーセナル)
引用:whoscored.com攻撃サイド(左:ブライトン、右:アーセナル)
引用:whoscored.com
ブライトンは、マーチを中心に右サイドを起点にして速攻を仕掛ける場面が多かった。アーセナルは中央もサイドも割合がそこまで変わらないものの、後方でのパス回しの時間帯が長かった影響と言えるだろう。
ヒートマップ(左:ブライトン、右:アーセナル)
引用:whoscored.com
アーセナルは、ブライトンの中盤5枚の守備ブロックの手前でボールを回し続けたことがヒートマップに如実に表れている。
ゴール期待値、パスマップ
Brighton and Hove Albion vs Arsenal Running xG
Arsenal looked like they might run rampant in the first 10 minutes then they stopped. The subs didn’t help. Two badly needed points dropped. pic.twitter.com/kQu1esW2Fl
— Scott Willis (@oh_that_crab) 2018年12月26日
ゴール期待値は、ブライトンの1.46点に対して、アーセナルは0.72点。特にアーセナルは、シュート1本に終わった後半に全くゴールが期待できなかったことが如実に表れている。
【PickUpData】明暗を分けたファイナルサードのサイドでの質の差
ブライトンのパススタッツ
引用:whoscored.com
ブライトンは、何度も速攻に関わったマーチがキーパス2本で、クロスも8本中3本成功。同じく右サイドのモントーヤもキーパス3本を記録。右サイドから質の高い攻撃を繰り広げていたことがわかる。
ブライトンのキーパスの詳細
引用:Arsenal公式
ブライトンのキーパス9本のうち、5本が右サイド奥からのものである。
アーセナルのパススタッツ
引用:whoscored.com
アーセナルのクロスの詳細
引用:Arsenal公式
一方のアーセナルは、サイドから前進する場面を作っていたものの、両サイドともに最後の精度が低く、リヒトシュタイナーはクロス3本をすべて失敗。コラシナツもクロス2本をいずれも失敗している。
流れを変えられなかった選手交代・フォーメーション変更
週末にリバプール戦を控え、負傷者も多く抱える中でのミッドウィークの試合であり、難しい采配となったのは間違いない。一定のターンオーバーも予想されたものの、現状のベストメンバーと言える布陣で臨んだ。
エジルとラカゼットの早めの交代は、リバプール戦も睨んだ上でのあらかじめ予定されていたものであったかもしれない。しかし、交代策としてはあまり成功しなかったと言えるだろう。ブライトンの中盤5枚をどのように突破するかがポイントの1つであったこの試合で、ボールを引き出す動きがうまい2人がいなくなったのは明らかにマイナスであったと言える。
リヒトシュタイナーのファイナルサードでのプレーの質
右サイド深くでボールを受けるシーンが多かったリヒトシュタイナーであったものの、そこからのプレーの選択肢の少なさと精度の低さで攻撃ではあまり貢献できなったと言える。
もともと、守備に重きを置いたバランスに優れる選手であるはずであり、今シーズンのアーセナルで右SBのタスクとなっている、高い位置で張って攻撃で貢献する動きは得意とは言えないだろう。
左右のSBに3バックの右もこなし、負傷者が多い最終ラインで貴重なピースとなっているのは間違いないものの、攻撃面での関与については、チームとしてやり方を変えるなど、改善が必要であると言えるだろう。
こういう内容の試合でこそ、サイドで1対1が仕掛けられる純粋なサイドアタッカーが必要であるのかもしれない。
シーズン前半折り返し。次節はアウェイでリバプール戦
これで19節が終了し、シーズン折り返し地点。エメリ新体制で始まったシーズンながら、首位とは勝ち点13差であるものの、2位とは勝ち点7差で5位というのは、まずまずの結果と言えるだろう。
そして、次節はアウェイでのリバプール戦。ホームでの試合では互角以上に戦えることを示したものの、現在の勢いや負傷者の状況を踏まえると、かなり難しい試合となることが予想される。苦しい状況ではあるものの、またしてもビッグマッチでテンションの高いパフォーマンスを見せることができるだろうか。