してやられたり。アーセナル 対 マンチェスター・ユナイテッド レビュー【2018/19 FAカップ 4回戦】
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試合結果とフォーメーション
2019/01/25 FAカップ 4回戦
アーセナル 1-3 マンチェスターU
31分 サンチェス
33分 リンガード
43分 オーバメヤン
82分 マルシャル
前半
アーセナルは4-2-3-1を採用。GKにはチェフ。エジルはベンチスタート。
マンチェスターUは、4-3-1-2(4-3-3)を採用。好調のラッシュフォード、マルシャルではなく、ルカク、サンチェスを起用。
(GKはデ・ヘアではなく、ロメロです。図は間違えました。)
マンチェスターUは、ルカクを中央ではなく右サイド寄りでプレーさせる奇策。リンガードが偽9番のような動きを見せ、ルカクとサンチェスがサイドを起点にプレーする形。
試合は、アーセナルが左サイドから攻め込む場面を多く作り、マンチェスターUは縦に早い攻撃で前線のアタッカーを活かそうとする狙い。
21分、パパスタソプーロスが負傷し、ムスタフィが代わりに入る。
30分、右サイドに流れたリンガードとエレーラでボールを繋ぐと、内側に入っていたルカクがフリーに。エレーラからパスを受けたルカクは、裏に飛び出すサンチェスにスルーパス。アーセナルはナイルズが残ってしまいオフサイドを取れず。サンチェスは冷静にチェフをかわしてゴールネットを揺らした。マンチェスターUが先制。
直後の32分、アーセナルが押し込んだところでボールを失い、ショーがスペースを使って左サイドから右サイドに運ぶと、右サイドに開くルカクの前方のスペースへパス。アーセナルはオフサイドトラップに失敗。コシェルニーが懸命に戻ってルカクに追い付くものの、中ではムスタフィがリンガードとサンチェスと1対2。最後はフリーのリンガードが冷静にゴールネットを揺らす。マンチェスターUが早くも追加点。
40分、左サイドからイウォビが内側に切り込んだところでラムジーが外側に開いてボールを受けてPA内に進入。バイリーの股を抜くグラウンダーのパスを中に入れると、ファーから詰めたオーバメヤンがこれを流し込む。アーセナルが1点返す。
前半は、2-1でマンチェスターが1点リードして折り返す。
アーセナルのビルドアップとマンチェスターUの守備
アーセナルのビルドアップ時、マンチェスターUは4-3-3の布陣。アーセナルがGKからビルドアップする際は中盤含めて前からプレスをかけるものの、ミドルゾーンではそれほどプレスはかけず。中盤の3センターの両脇のスペースが空きやすいため、アーセナルはジャカなどから早めの展開をすることで、イウォビがスペースに下りて受けたり、コラシナツが上がって受けるなどして、前進に苦労することはあまり無かった。
両サイドともに同じ形で前進する形を作っていたものの、特に左サイドのイウォビが、キレのあるドリブル、スピードで再三パスを受けてファイナルサードまでボールを運んだ。
アーセナルが左サイドでファイナルサードに持ち運んだ時、マンチェスターUはSBのヤングに加え、エレーラやマティッチもスライドして対応し、アーセナルはコラシナツやラムジーも絡んで攻撃しようとするも数的優位は作れず。中央ではラカゼットにバイリーが付いており、イウォビやコラシナツからアーリークロスを上げるか、詰まってボールを奪われるシーンが多くなった。
逆に右サイドでは、マティッチやポグバがアーセナルの左サイドをケアする意識が強かったためかスライドが遅れる場面があり、オーバメヤン、ラムジー、ナイルズがスペースがある中でダイレクトの繋ぎなどを見せ、崩せる雰囲気を感じさせた。「試合開始から10分ほど」と「前半最後の5分ほど」は右サイドから可能性のある攻撃を何度か見せていた。
マンチェスターUのビルドアップとアーセナルの守備
マンチェスターUのビルドアップ時、アーセナルは2枚で前からプレスをかけるものの、マンチェスターUは最終ラインと3センターで容易にボールは保持できる状態。しかし、それほどショートパスはつながず、早めに前線にロングボールを入れる場面が目立った。起点となったのはルカク。
ルカクは中央ではなくCBとSB間に位置し、手前で受けたり、サイドに張ったり、奥のスペースを狙うなどし、高さとスピードを活かして起点を作った。
アーセナルの攻撃時にも、ルカクは右サイド高めに残り続け、コラシナツのオーバーラップで空いたスペースを使おうとした。
得点シーン振り返り
●マンチェスターUの1点目のシーン
リンガードが右サイドに流れ、裏やサイドを狙うことが多かったルカクが内側に入っており、アーセナルのマークが疎かになったところでルカクがフリーでボールを受けることに成功。アーセナルは人数は足りていたものの守れず。
●マンチェスターUの2点目のシーン
アーセナルがゴール前まで押し込んでいたところでボールを失い、ボールを持ったショーにトレイラやジャカが横切られて制限することができず。コラシナツもそれほど高い位置にいたわけではないものの、ショーにプレスをかけるかルカクをケアするか迷って中途半端なポジショニングに。ルカクをケアすることを始めから選択していれば、ゴール前で間に合って防げたかもしれない。
●アーセナルの1点目のシーン
再三仕掛けていた左サイドからの攻撃ではあるものの、崩せたと言えるのはおそらくこのゴールシーンのみ。イウォビ、ラムジー、コラシナツが絡み、マンチェスターUも人数は揃っていたものの、ラムジーの巧みな動き出しとバイリーの股を抜くパスで崩すことに成功した。
前半のスタッツ
前半のスタッツ
(左:アーセナル、右:マンチェスターU)
引用:SofaScore.com
ボール支配率、シュート数ではアーセナルが上回ったものの、ビッグチャンス数はお互い2回で、それぞれ1回決めるも、マンチェスターUの1点リード。マンチェスターUは、カウンター攻撃を2回繰り出し、狙い通りの展開ができていたと言える。
後半開始~63分
後半開始時、両チームともにメンバー変更・フォーメーション変更は無し。
後半開始直後、トレイラからのサイドチェンジで右サイド深くまでボールを運んだアーセナルは、PA内でナイルズのクロスにラムジーがヘディングが合わせて際どいシーンを作る。
55分、コシェルニーがルカクとの競り合いの際に負傷。約10分の治療。
64分~71分
64分、負傷したコシェルニーに代えてゲンドゥージを投入。ジャカをCBに移す。さらに、イウォビに代えてエジルも投入。
エジルは2列目右に入ったものの、ピッチ中央や左ハーフスペースあたりにポジショニングし、頻繁にボールを受けて攻撃の起点となろうとする。
72分~87分
72分、マンチェスターUは、ルカクとサンチェスに代えて、ラッシュフォードとマルシャルを投入。リンガードが右に移り、よりシンプルな3トップの形となる。
アーセナルは、左サイドからエジル、ゲンドゥージ、コラシナツを起点に攻め込もうとするも、4-5-1で守りを固めるマンチェスターUに対して崩すことができず。
逆に、ラッシュフォードとマルシャルのスピード・突破力、ポグバのキープ力・推進力が脅威になり続け、ボールを保持されて攻め込むことすらできず。
すると81分、アーセナルはエジルがラカゼットへの縦パスを入れ、落としたボールをエジルが再度受けようとするも、流れたボールをポグバに拾われて一気にカウンターに。ラッシュフォードとマルシャルが両サイドに開いて上がり、ポグバは自分でPA手前からシュート。チェフが弾くも、マルシャルがこれを押し込んで追加点。マンチェスターUが点差を広げる。
得点シーン振り返り
●マンチェスターUの3点目のシーン
ラカゼットの落としがずれたのがボールロストの原因であるものの、前がかりになろうとしてトレイラとゲンドゥージが左右に開いており、中央にはCBしかおらず、ポグバにゴール前までフリーで運ばれることとなった。さらには、快速のラッシュフォードとマルシャルも走り込んでおり、マンチェスターUの狙いが成功したと言える。
88分~
マンチェスターUは、リンガードに代えてP・ジョーンズを投入し右SBに。ヤングが前に移る。
アーセナルは2点ビハインドの中、マンチェスターUの守備ブロックに対して押し込むこともできなくなり、万事休す。
マンチェスターUが勝利し、アーセナルはFAカップの4回戦敗退が決まった。
後半のスタッツ
後半のスタッツ
(左:アーセナル、右:マンチェスターU)
引用:SofaScore.com
後半も、ボール支配率、シュート数ではアーセナルが上回ったものの、ゴールを奪ったのはマンチェスターU。後半も2回のカウンター攻撃を繰り出した。
【PickUpData】決定機を確実に決めたマンチェスターU
試合の流れ
試合を通じて攻め込む時間が長かったのはアーセナルであるものの、前半に立て続けに2ゴールをあげたマンチェスターUが終始狙い通りに進めていたと言える。アーセナルは、60分過ぎの交代策でも好転させるには至らなかった。
マッチスタッツ
(左:アーセナル、右:マンチェスターU)
引用:SofaScore.com
マンチェスターUは、シュート8本ながら3ゴール。ビッグチャンス3回のうち2回を決め、カウンター攻撃も4回。ゲームプラン通りの内容となったのではないだろうか。
平均ポジション
(左:アーセナル、右:マンチェスターU)
引用:whoscored.com
アーセナルは、コラシナツ(31)がかなり高く、左サイドでの攻撃参加の多さが表れている。
マンチェスターUは、ほぼフォーメーション通りのキレイな平均ポジションながら、中盤ではポグバ(6)がより攻撃的なプレーを見せたことが表れている。
攻撃サイド
(左:アーセナル、右:マンチェスターU)
引用:whoscored.com ヒートマップ
(左:アーセナル、右:マンチェスターU)
引用:whoscored.com
アーセナルがイウォビ、コラシナツを中心に左サイド奥のスペースから攻撃を多く仕掛けたのがよく表れている。
マンチェスターUは、右サイド奥のスペースはそれほど濃くなく、ルカクのプレーは効果的であったものの、回数は多くなかったことが表れている。
ゴール期待値
Arsenal vs Manchester United xG from last night.
Manchester United did a really good job shutting down the Arsenal attack in the second half, just the one really good chance the Ramsey one at 46′.
After that Arsenal created just 0.26 xG pic.twitter.com/aYwueopGM5
— Scott Willis (@oh_that_crab) 2019年1月26日
ゴール期待値は、アーセナルの1.66点に対して、マンチェスターUは1.16点。アーセナルのほうが0.5点上回っており、マンチェスターUは少ない決定機を確実にものにして3ゴールをあげたと言える。
駒不足とそれに伴う攻撃パターンの乏しさ
ベジェリンのシーズン絶望の負傷により、右サイドで攻撃のアクセントを付けられる選手がいなくなってしまったアーセナル。左サイドからイウォビやコラシナツを中心に攻め込むことは、マンチェスターUとしては試合前からわかりきっていただろう。
強さとスピードのあるルカクを右サイド深くで張らせることで、コラシナツの攻撃参加を牽制するか、もしくはオーバーラップ後の空いたスペースを有効活用する狙いだったのは明らかと言えるだろう。
マンチェスターUとのフォーメーションの噛み合わせ上、ビルドアップには苦労せず、ファイナルサードへの進入には苦労しなかった。しかし、左サイドに人数をかけるのみの攻撃パターンが成功したのは1回のみ。
ムヒタリアンが離脱中であるのも影響が大きく、2列目の右サイドでプレーできる選手が実質いないと言える状況。
前線と2列目の控えがこの試合ではエジルしかいなかったスカッドでは、劣勢から好転させる采配は難しかったかもしれないが、左サイド一辺倒にならず、もう少し右サイドも活用するプレーはできなかっただろうか。
試合開始時点の戦術的采配でマンチェスターUが上回っていた時点で、ほぼ勝負はついていたと言える。
CB2人が負傷。またもや緊急事態に
CBのコンビとして安定感が出つつあったパパスタソプーロスとコシェルニーがまさかの同時に負傷。
負傷の度合いはまだわかっていないものの、次週はミッドウィークにカーディフ戦、週末にマンチェスターC戦を控える中、最終ラインはまたもや緊急事態に。
確実に起用できるのはムスタフィと負傷明けのマヴロパノス。もしくは、本職ではないモンレアルやリヒトシュタイナー。更に控えるのはU-23チームのプレゲズエロやメドリー。
ここで勝ち点を落とすと、早くも4位争い脱落の可能性すら出てくる状況であり、なんとか踏ん張りたいところ。
リーグ戦とELに集中してどこまでいけるか
これで、カラバオカップに続きFAカップも敗退。2月からELの決勝トーナメントが始まる中、リーグとELに集中できることをポジティブに考えるしか無いだろう。
エメリ就任1年目、限られたスカッドで負傷者続出の中、リーグ戦4位争いとEL優勝を狙うのでいっぱいいっぱいである。
今シーズン、ほぼ離脱が無いオーバメヤンとラカゼット、ボランチ3選手がこのままどこまで奮闘し続けられるだろうか。冬の補強で少しでもスカッドに厚みが出ることを期待したい。
前節の振り返りはこちら
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前回対戦はこちら
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