【データで紐解く】川崎フロンターレの不調の要因(2019シーズン)

Jリーグ

 

スロースタートとなった2019シーズンのフロンターレ

リーグ戦で3分1敗、ACLで1勝1敗というスタートを切った2019シーズンのフロンターレ。ACLはホームで勝利しアウェイで敗戦ということでそれほど悲観的な結果ではないものの、リーグ戦は4試合でいまだ勝ちなしという低空飛行に。

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そんなスロースタートとなった2019シーズンのフロンターレの不調の要因をデータから紐解いていきたい。

昨シーズンと戦い方は変わったのか?

昨シーズン(計34試合)と今シーズン(4節まで)の各スタッツのリーグ順位を比較してみた。

川崎フロンターレ スタッツ 2019シーズン

対象の試合数に差がある比較になってしまうものの、傾向として明らかに昨シーズンと違いが出ている部分についてまずは注目してみる。

プレーの傾向として昨シーズンと明らかに異なっているのが「クロス」「ドリブル」

クロス
【2018】平均12.6本(リーグ17位)
【2019】平均17.0本(リーグ3位)
Football LABより引用

1試合あたりのクロス本数約5本も増えており、リーグ順位が下から2番目が上から3番目に一気に変化している。ショートパスを繋いで崩しきることを狙う印象が定着しているフロンターレにおいて、これは明らかに戦い方の変化であると言えるだろう。

そしてもう一つが「ドリブル」

ドリブル
【2018】平均12.3回(リーグ13位)
【2019】平均16.0本(リーグ3位)
Football LABより引用

1試合あたりのドリブル回数約4回も増えており、リーグ順位も13位から3位に変化している。中央から崩しきることにこだわらず、サイドからのドリブル突破も攻撃の形としてより多く取り入れようとしていると言える。

今シーズンは4-4-2の採用が増え、さらにドリブラーである長谷川齋藤の起用が増えており、クロスやドリブルが数字として増えているのは意図した結果であると考えられる。そしてこれは、新加入のFWダミアンを新たなオプションとして確立したいためである。

高さ・強さのあるダミアンをシンプルに活かす形やダミアン小林知念の3枚を活かして2トップを採用する形を取り入れようとしている。しかし、ダミアンはリーグ戦ですでに2ゴールという一定の結果を残しているものの、シンプルに高さを活かしたシーンは多くなく、90分通してのいろいろなシチュエーションにおける連携という意味ではまだまだ試行錯誤中である。

ここで、クロスに関してさらに詳細のスタッツを確認してみる。今シーズンのリーグ戦とACLの計6試合のクロスのスタッツにおいて特に注目したいのはクロスの成功率。(データソースが異なるため、上述のクロス本数とは異なる。)

(データソース:SofaScore

ほぼ毎試合クロスを20本前後上げながらも成功したのは5本前後。6試合平均でクロス成功率23.1%。約4本に1本すらクロスが成功していない。(クロス成功=クロスが味方に届く)

ダミアンに加え、さらに小林知念山村らが2枚目としてペナルティエリア内で待ち構えるシーンが多いが、ヘディングシュートにつながったシーンがあまりにも少ない。試合を見ている限り、クロスの精度というよりも、クロスを上げる選手とFW陣とのイメージの共有ができてないように思える。FWがDFに競り負けてヘディングできなかったというよりは、まったく合わせられるポイントにクロスが上がらなかったシーンの印象が強い。

中で待つ2枚の位置取りのイメージを合わせていき、よりダミアンの高さをシンプルに活かしたり、逆にダミアンをおとりとして活かしたりして、クロスをチャンスに繋げていくことでゴールがより近づいてくるだろう。

スタッツを改めて見てみると、クロスドリブルが増えたからといって、完全に戦い方が変わったとは言えないだろう。

「パス」「ボール支配率」「ペナルティエリア進入回数」「30mライン進入回数」を見ると今シーズンも変わらず上位に位置しており、『パスを回して押し込み続けるスタイル』は健在と言えるだろう。

「パス」「ボール支配率」「ペナルティエリア進入回数」が昨シーズンより若干落ちているのは、クロスドリブル突破が増えた影響であると考えられる。しかし、クロスやドリブルはあくまでオプションやアクセントという位置付けになるだろう。

ゴールを奪えていないのはなぜ?

では、昨シーズンと同じようなプレースタイルを披露していながら、なぜ勝てていないのか。なぜゴールを奪うことができていないのだろうか。

「シュート数」は今シーズンも1位。そして、「枠内シュート数」4位。しかし、「ゴール数」11位

シュート
【2018】平均15.6本(リーグ1位)
【2019】平均17.8本(リーグ1位)

枠内シュート
【2018】平均5.7本(リーグ1位)
【2019】平均6.3本(リーグ4位)

ゴール
【2018】平均1.6本(リーグ1位)
【2019】平均0.8本(リーグ11位)

Football LABより引用

シュート数は昨シーズンと同じ1位でありつつ、さらに昨シーズンから平均2本以上も増えている。そして、枠内シュート4位であるものの昨シーズンよりも0.6本上回っている。リーグ全体のシュート精度が上がっているということだろう。

リーグで最もシュートを打っているチームながら、枠内シュート率は高くなく、結果的にゴールを奪えていないということになる。

では、枠内にシュートが飛んでいない理由として考えられることはなんだろうか。

  • シュート精度が低い
  • 崩しきらずにシュートを打っている

崩しきらずにミドルシュートを多く打っているためにシュート数が多いという印象は無く、シュートを決めきれていないのは確かであると考えられる。

しかし、それ以外に考えられるのが、相手に引かれてブロックを作られている状況でのシュートが多いのではないかということ。もともと、フロンターレ対策として引いて守るチームが多いのは知っての通り。しかし、フロンターレには「前からのプレスによるボール奪取からのショートカウンター」というもう一つの強みがあるはずである。

フロンターレのショートカウンターの強み

Football LABより引用

2018シーズンのショートカウンターのデータを見ると、ショートカウンターのシュート率(ショートカウンターがシュートにつながった割合)がリーグ1位であり、ショートカウンターの精度がリーグで一番高いことがわかる。

2019シーズンのショートカウンターのデータはまだ公開されていないものの、試合を見ている限りショートカウンターをあまり繰り出せていない印象が強い。

ほとんどの相手はかなり余裕を持って後方で数的優位を作ってボールを回し、さらに無理してショートパスで前進しようとせず、前線へのロングボールを選択しているように見受けられる。これまでの試合で唯一真っ向勝負で来たのはマリノスのみであるはずである。

これはフロンターレ対策がより一層顕著に表れていると言える。連覇したフロンターレの強みの1つとして、ボール回しのみではなく前プレでのボール奪取からのショートカウンターも認められたということだろう。

対策されていることと合わせて原因として考えられるのは、前線のメンバー構成の変化。昨シーズンのベースは、1トップの小林とトップ下の憲剛の2枚でパスコースを制限し、特に憲剛がわかりやすくスイッチをいれることでサイドの阿部家長がそれに連動して挟み込んでいく形であった。前線4人がほぼ固定されて起用され続けていたことによる連動性の高さを発揮していた。

しかし、今シーズンはトップには小林ではなくダミアン知念が起用されることが多く、憲剛もトップ下ではなくボランチでの出場だったりする。そして一番影響しているのは阿部がほとんど試合に出ていないことではないだろうか。

 

阿部とエウシーニョの不在の影響

守備の上手さ、特に守備時のポジショニングやプレスの上手さはスタッツに現れにくいが、結果的に出場時の失点を減らすことに貢献しているはずである。

出場時のチームの平均得失点(2018シーズン)

Soccer D.B.より引用

昨シーズンの選手ごとの出場時の平均失点、平均得点のデータを見ると、左端に阿部が位置している通り、阿部が出場した試合の平均失点が一番少ないことがわかる。さらには、あれだけ攻撃面がクローズアップされがちなエウシーニョ阿部に次いで2番目に出場時の平均失点が少ない

スタメン時のチーム成績(2018シーズン)

Soccer D.B.より引用

さらに、2018シーズンの選手ごとのスタメン時のチーム成績を見ても、ここでも阿部エウシーニョ1位・2位に並んでおり、この2人の勝ち点獲得への貢献度の高さは明らかである。

エウシーニョが退団し、阿部ダミアンに押し出される形でいまだスタメン0で、途中出場3試合でわずか32分しかプレーしていない状況である。

2019シーズンに入ってから失点がものすごく多いわけではないものの、守備が機能することで良い形で攻撃に転じることができるのは間違いなく、それが2019シーズンになってからあまり発揮されてないのは阿部とエウシーニョの不在が大きく響いていると言えるだろう。

エウシーニョの穴は新戦力を中心に補うしかないものの、阿部がスタメンに名を連ねるようになれば、攻守ともにクオリティーが向上するのではないだろうか。過去2シーズンで固定してきたメンバーに頼りすぎては上積みが期待できないものの、代えていい選手と代えてはいけない選手をうまく見極めながら新戦力を融合させていくことが必要なはずである。

 

右サイドで起こっている問題

エウシーニョの穴と合わせて右サイドで問題となっていると感じるのは家長のパフォーマンス。昨シーズンはリーグMVPを獲得するほどの高いパフォーマンスを継続的に見せていたものの、今シーズン序盤はそこまでのプレーを見せているようには見えず。

結果的に右サイドは右SHも右SBもあまり機能していない状況になっていると言える。

家長のパフォーマンスは本当に落ちているのか?

期待の高さゆえではあるものの、批判されつつある今シーズンの家長のパフォーマンス。そしてそれでも起用し続けている鬼木監督の采配。

データは確認できていないものの、目に見えて昨シーズンより少ないと感じるのは「スプリント」だろうか。

昨シーズンは、リードしている終盤に家長のスプリントで相手の追い上げを封じ込め、さらにはキープ力を活かして逃げ切るというシーンがかなり多く、家長が勝ち点の獲得に貢献した試合はかなり多いだろう。

今シーズンはリードして終盤を迎える試合が少ないものの、ドリブルでサイドを突破するシーンも少なく、守備でのプレスバックも少なめに見えるビルドアップ時にボールサイドや低めに寄りがちで、裏に飛び出したり、ペナルティエリア内に走り込むような動きがかなり減っているように思える。

コンディションが上がっていないのを本人も認識していて、その状態ながらもチームに貢献するために自分のキープ力をより活かそうとしているという可能性も考えられるが、それがプラスになっているかは疑問である。

では、本当に家長のパフォーマンスが落ちているのかスタッツで確認してみたい。

家長の1試合当たりのスタッツ

(データソース:SofaScore

対象試合数が32試合(2018)と4試合(2019)という差があるデータではあるものの、昨シーズンから明らかに悪化しているのが「シュート数」である。上述した通り、チームとしては昨シーズンより毎試合平均2本シュートが増えているにも関わらず、家長個人では1.7本が1本に減少している。シュート意識の低下というよりは、ゴール前でフィニッシュに絡もうとするプレーが減っているのではないだろうか。

他のスタッツを見ると、「パス成功」「タックル勝利」「デュエル勝利」「被ファール」が昨シーズンより向上しており、これだけを見るとパフォーマンスが悪くなっているとは言えないように思える。しかし気になるのは、いずれも球際に関するデータであり、これこそがボールサイドに寄りがちな傾向を表しているという解釈もできるだろう。

個人としてのプレー精度は決して低くないものの、チームにとってより効果的なプレーができているかという点には疑問が残る結果となった。

目まぐるしく変わる右SBの選手起用

右サイドでもう一つ問題となっているのが、右SBが試合ごとに変わるという点である。

昨シーズンのリーグ戦で32試合にスタメン出場したエウシーニョが退団し、控えであった武岡田坂も退団。新たにマギーニョ馬渡を獲得し、今シーズンはマギーニョ馬渡が本職としてポジションを争いつつ、攻撃的ポジションでもプレーできる鈴木もここに絡むという構図。

しかし、これまでの6試合の右SBを振り返ると、6試合で5選手を起用するという状況に。

今シーズンの右SBの選手起用

期待されたマギーニョがあまりフィットしておらず、続いて馬渡が定着し始めたところで負傷離脱し、鈴木の出番が増えているという状況。また、今シーズンはベンチに攻撃的な選手を多く入れる傾向がより強くなっており、ベンチに右SB不在で守田登里を起用する試合も。

一番早くフィットしそうであった馬渡が4月中旬まで離脱予定のため、厳しい状況は続くだろう。

右サイドの機能性

右SBが代わる代わるであることによって右SHとの連携が向上しにくい点が右サイドの機能性に影響していると言えるだろう。

さらに、ダミアンの起用により小林が右SHで起用されることが増えているが、小林家長でプレースタイルが全く異なるため、さらに右SBのプレーを難しくしているとも考えられる。

右サイドの攻撃の様々なシチュエーション

小林が右SHに入ったときには右SBには小林ゴール前で活かすプレーが求められる。また、家長が右SHに入ったときには、逆サイドに家長が流れているときには右SBは幅を取りつつ1対1で仕掛けるプレーが求められ、家長が右サイドでボールキープするときには適切な距離感で連動したプレーが求められる。

エウシーニョはなんでも器用にこなしていたものの、新戦力にこれだけのプレーの幅を高いレベルですぐにこなすことを期待するのは酷だろう。

家長が逆サイドに流れてしまう点も含め、チームとして右サイドをどのように機能させていくのかを整理して確立していく必要があるだろう。まずはある程度選手を固定してイメージを合わせていくことが重要かもしれない。

新加入選手のフィットのその前に・・・

連覇を果たしたフロンターレの強さの要因の一つが、メンバー固定によるプレーイメージの共有とその精度の高さと言えるだろう。

2017シーズンには阿部家長がシーズン途中から徐々にフィットし、シーズン終盤には欠かせない存在に。そして昨シーズンは守田がシーズン序盤から頭角を現してポジションをすぐに確立。しかし、アクセントを付けられる存在として期待された齋藤は最後までフィットせずプレー時間はわずか404分でスタメンも2試合のみ。知念下田鈴木らもスタメンを脅かすほどのアピールはできず。夏に加入したカイオはベンチ入りすら一度も無いままシーズン終了。

そして迎えた今シーズンは主力になりうるレベルの選手を軒並み獲得し、ACLとリーグ戦の両立と戦術的バリエーションの増加を目指すものの、やはり新戦力がフィットするには時間がかかる様子。

しかし、気になるのは今シーズンの新加入選手よりも昨シーズンまでの控え選手のフィット具合

G大阪戦のスタメンを見ると、昨シーズンまでのスタメン組でない選手が5人(知念、長谷川、田中、山村、鈴木)。

リーグ4節・ガンバ大阪戦のスタメン

そして結果はホームで0-1の敗戦であり、それ以上に気になるのは今シーズン最多のボールロスト20回という内容。

憲剛家長がいたものの、それ以外の選手とのパス交換がスムーズでないシーンが目立ち、パスミスによるボールロストも多く、ビルドアップ時に相手の守備に対する臨機応変な対応もできず。今シーズンの新加入選手は山村1人であったにも関わらずこの内容である。

昨シーズンまでの控え選手の底上げ失敗のツケが来ているのは間違いなく、これまでのスタメン組にどこまで頼って新加入選手を融合させていくのか、選手起用の難しいシチュエーションが続くだろう。

 

【まとめ】フロンターレの今後の浮上に必要なこと

いろんなデータなどから紐解いたことを踏まえ、フロンターレの成績が上向いていくためのポイントとして考えられる点は4つ。

  1. クロスを待つポジショニングの改善
  2. 阿部の起用による前線からの守備の改善
  3. 右サイドの攻撃パターンの整理と連携向上
  4. 新加入選手の起用は少しずつ

幸いにも代表ウィークによる中断期間があったことで、チームとしてのやり方を再度確認しつつ、新加入選手たちとのコンビネーションを高めていくことができたはずである。まだまだシーズン序盤の数試合が終わっただけであり、悲観的になる必要は全く無い。3連覇とACLタイトルに挑戦するフロンターレのチームとしてのさらなる成長に期待したい。

編集後記

Football LABSoccer D.B.のサイトは以前から知っていたものの、深くまでしっかり見ていくといろんな細かいデータが盛り沢山なのを知ることができた。今後も積極的に活用して考察してみたい。皆さんも是非覗いてみてください。

また、冒頭のレーダーチャートは「GIMP」を使って作成!!
いわゆるペイントソフトとは勝手が違うので慣れるのに苦労したけど、一度描いてしまえば今後はそれほど苦労せずに描けそうなので、今後は積極的に活用してインフォグラフィックに挑戦していきたい。

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noteもやってます。よかったら見てください!
https://note.mu/polestar222