荒れた夢の劇場。マンチェスター・ユナイテッド 対 アーセナル レビュー【2018/19プレミア第15節】
Contents
試合結果とフォーメーション
2018/12/05 プレミアリーグ第15節
マンチェスター・ユナイテッド 2-2 アーセナル
26分 ムスタフィ
30分 マルシャル
68分 ロホ(OG)
69分 リンガード
前半
【マンチェスターU】基本:3-4-1-2 守備:3-4-3
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:5-2-3
アーセナルは出場停止のジャカに変えてゲンドゥージをスタメン起用。ラカゼット、ムヒタリアンはベンチスタートで、エジルは引き続き負傷によりベンチ外。
マンチェスターUは、若いダロトをスタメン起用。ルカク、ポグバはベンチスタート。
26分、左CKをムスタフィがヘディングで合わせると、デ・ヘアが弾いたボールはクリアされるものの、ゴールラインを超えており、判定はゴール。アーセナルが先制に成功する。
直後の30分、ゴール前のFKでロホが直接狙ったシュートをレノが弾くも、エレーラが反応して折り返したボールにマルシャルが詰めてゴールネットを揺らす、マンチェスターUが同点に追いつく。
32分、ホールディングがラッシュフォードからファールを受けると、そのまま起き上がれず負傷交代。代わりにリヒトシュタイナーが投入され、右CBに入る。
そのまま両チームともに大きなチャンスもなく、同点で前半を折り返す。
アーセナルのビルドアップとマンチェスターUの守備
アーセナルのビルドアップ時、後方3枚に対してマンチェスターUの前線のプレスは2枚。数的優位で余裕を持ってボールを保持できるものの、アーセナルのボランチに対しては、リンガードが常に1枚マークしつつ、もう1枚に対してもエレーラ(orマティッチ)がケアしてボールが出てきたらアタックできる状態としていた。両WBに対してもマンチェスターUのWBが厳しいマークに付いている。
アーセナルの狙い所は、マティッチの両脇のスペースとなり、イウォビやラムジーがうまく顔を出してボールを受けることで、前進するきっかけを作ろうとした。
また、左サイドのホールディング、ゲンドゥージ、コラシナツ、イウォビ(ラムジー)がダイレクトにつなぎながら相手のマークを交わして突破することでチャンスを作っていた。
マンチェスターUのビルドアップとアーセナルの守備
マンチェスターUのビルドアップでは、後方3枚に対してアーセナルは前線3枚で同数プレス。マティッチが少し下がり気味でボールを引き出そうとするものの簡単には触らせず、またエレーラに対しても主にゲンドゥージがマークしており、簡単に前を向かせないようにした。
マンチェスターUはGKに戻してロングボールを蹴る場面が多くなったが、ゲンドゥージが前に出ることで空いてしまうトレイラの周りのスペースをリンガードが自由に動いてボールを引き出すことでチャンスを作ろうとした。
後半開始~
【マンチェスターU】基本:3-4-1-2 守備:3-4-3
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:5-3-2(5-4-1)
後半開始時、アーセナルは前半終了間際に負傷したラムジーに代えて、ムヒタリアンを投入。
アーセナルの守備の変更点
アーセナルは前半にリンガードにチャンスを作られる場面があったため、後半から守備を変更。
前線のプレスはボールサイドの2枚のみとし、逆サイドのシャドーはボランチと同じ高さまで下がって、リンガードが自由にプレーできるスペースを消した。これにより後方では比較的自由にボールを持たれるようになったものの、危険なエリアに進入されにくいようにした。
65分~71分

【マンチェスターU】基本:3-4-1-2 守備:3-4-3
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:5-3-2(5-4-1)
スコアが動かず、マンチェスターUはルカクを、アーセナルはラカゼットをそれぞれ投入。アーセナルはすでに3枚のカードを切り終わる。
この交代が的中したのは68分。ラカゼットとムヒタリアンのプレスでDFからボールを奪うと、そのままショートカウンターでPAまで進入し、最後はラカゼットがロホと競りながら打ったシュートは転がりながらゴールネットに吸い込まれる。アーセナルが勝ち越しに成功。
しかし、直後のマンチェスターUのキックオフのリスタート、ロングボールを前線のルカクめがけて蹴ると、こぼれたボールの処理をコラシナツが誤り、そこにリンガードが詰めてゴールネットを揺らす。マンチェスターUがすぐさま同点。
72分~84分

【マンチェスターU】基本:4-3-1-2 守備:4-3-1-2
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:5-3-2(5-4-1)
マンチェスターUは、フェライニ、ポグバを立て続けに投入し、フォーメーションを4-3-1-2に変更する。
アーセナルがボールを保持する時間が増えるものの、マンチェスターUは前線のタレントを活かしてカウンターやクロスから得点を狙う展開に。
マンチェスターUのビルドアップ
マンチェスターUが4バックに変更したことで、アーセナルの前線のプレス2枚に対してCBが同数になってしまうため、ビルドアップ時にはマティッチが左CB脇に下りて起点となろうとした。
アーセナルのビルドアップ
マンチェスターUのフォーメーション変更により、サイドのスペースが空きやすくなったことで、特に左サイドで、コラシナツが高めに位置しながらも少し下がってボールを受けたり、ゲンドゥージが左サイドまで寄る動きを見せるなどして、左サイドを起点にアーセナルが押し込む時間帯を増やしていった。
85分~

【マンチェスターU】基本:4-3-3 守備:4-3-3
【アーセナル】 基本:3-4-2-1 守備:5-3-2(5-4-1)
85分頃から、マンチェスターUはフェライニを前線に上げてお馴染みのパワープレー。ルカクとフェライニの2枚で前線で競り、ゴールを狙う。
しかし、このまま同点で試合終了。2-2の引き分けとなった。
【PickUpData】両チームがイエローカード3枚という荒れた試合に
マッチスタッツ(左:マンチェスターU、右:アーセナル)
引用:SofaScore.com
シュート数はそれほど多くなく、お互い10本と9本。イエローカードが3枚ずつという荒れた試合となった。
マンチェスターUのインターセプト19回が際立っている。
平均ポジション(左:マンチェスターU、右:アーセナル)
引用:whoscored.com攻撃サイド(左:マンチェスターU、右:アーセナル)
引用:whoscored.comヒートマップ(左:マンチェスターU、右:アーセナル)
引用:whoscored.com
試合内容通り、アーセナルは左サイドを起点に前進していたことがデータに表れている。一方のマンチェスターUは、PA内およびバイタルエリアにほとんど進入できていなかったことがわかる。
【PickUpData】中盤の激しい攻防で目立ったエレーラとゲンドゥージ
両チームの守備のスタッツ
引用:SofaScore.com
守備のスタッツを見ると、エレーラがインターセプト6回、タックル5回(うち成功3回)というパフォーマンスを見せており、アーセナルのボランチのプレーを抑止したことがわかる。
両チームのデュエルのスタッツ
引用:SofaScore.com
デュエルのスタッツでも、両チームの中盤の選手の数値が際立っており、中でもゲンドゥージは、デュエル19回でそのうち勝利が12回とし、激しい競り合いでも負けていなかったことがわかる。
【PickUpData】アーセナルの左サイドの攻撃がキーに
ホールディング(左)と左CB出場時のパパスタソプーロス(右)のパス
引用:Arsenal公式
左CBでのパフォーマンスを上げてきているホールディングであるが、ビルドアップ時のパスにその貢献度が大きく表れている。
左タッチライン際に大きく開きつつ、常に前進するためのポジショニングやトラップをすることで、縦パスを出したり、ボランチに前を向いた状態でボールを渡すなど、効果的なプレーで左サイドからの攻撃に貢献していた。
より低めや内側に入ったプレーが多くなったパパスタソプーロスのデータと比較すると一目瞭然だろう。
両チームのパスのスタッツ
引用:SofaScore.com
ホールディングの貢献や終盤の押し込んだ時間でのプレーにより、コラシナツがキーパス数3本、ビッグチャンスクリエイト2回の活躍。失点に繋がるプレーはあったものの、攻撃では明らかに脅威となっていた。
中盤で激しい攻防を繰り広げていたエレーラやトレイラであるが、キーパスやビッグチャンスクリエイトでチャンスに絡んでいたことがわかる。
【PickUpData】ゴール期待値はアーセナル優位
Arsenal vs Manchester United Running xG pic.twitter.com/12XaTtBsjX
— Scott Willis (@oh_that_crab) 2018年12月5日
ゴール期待値は、アーセナルの1.79点に対して、マンチェスターUは1.28点となった。
マンチェスターUがチャンスを確実にゴールにつなげたのに対して、アーセナルは70分過ぎの連続したチャンスをものにできなかったのが結果に響いたと言えるだろう。
ビッグマッチを1勝1分で乗り切ったアーセナル
トッテナムとのノースロンドンダービーに勝利し、アウェイでのマンチェスターU戦を引き分けに終えたアーセナル。2勝できるチャンスは十分にあったものの、まずまずの結果でビッグマッチの連戦を乗り切ったと言えるだろう。これで20試合無敗継続中となった。
しかし、ほぼスタメンを奪取するパフォーマンスを見せていたホールディングが、この試合での負傷によりシーズン絶望が濃厚となってしまった。成長著しいターニングポイントとなるようなシーズンになりそうだっただけに、本当に残念である。そして、前線でも、エジルがいまだ復帰できず、ラムジーも負傷交代し、一気に怪我人が増えて苦しい状況に。
12月のハードスケジュールをこの状況でどう乗り越えるだろうか。
前節の振り返りはこちら