守田の現在地。大島との差とは【守田のパス分析:第10節 川崎フロンターレvsベガルタ仙台】

2019年5月9日Jリーグ

大島復帰後のリーグ戦で3連勝という流れの中で迎えた仙台戦。翌週のACLを考慮して大島はベンチスタートとなり、ボランチには田中碧と守田が起用された。守田は負傷明けで1ヶ月ぶりの出場となる。

守田には、憲剛、家長、さらには大島がいない中で、攻撃の組み立てをコントロールし、攻撃のスイッチを入れるプレーができるのかが注目された。

結果は3対1で仙台に快勝。初スタメンであったトップ下の脇坂、ボランチの田中碧、守田という若いトライアングルが期待に応える躍動を見せた。

3選手とも分析対象として興味がそそられる好パフォーマンスを見せたが、より大島のプレーに近い役割を担ったように見えた守田を対象にパス分析をすることで、守田の特徴やパフォーマンス、さらには大島との違いを読み解くことに挑戦する。

取り戻したのはコンディションだけではなく・・・

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昨シーズン、プロデビューイヤーながらシーズン序盤にレギュラーポジションを掴み取るだけでなく、日本代表に招集されるほどの活躍を見せた守田英正。

より期待されて迎える2年目であったが、アジアカップ離脱時の負傷からの復帰はシーズン開幕に間に合ったものの、昨シーズンのようなパフォーマンスは影を潜め、4月上旬に再び負傷して1ヶ月の離脱となった。

そして復帰戦となったこの試合。怪我から回復しただけでなく、本来のプレーの判断の早さを取り戻した状態で戻ってきた。

運動量を活かして前線にまで顔を出すアグレッシブさを見せた田中碧や鋭いスルーパスを何度も出して2アシストを記録した脇坂の躍動が目立った試合ではあるものの、それらを活かすために繋ぎ役として奮闘したのは間違いなく守田。

70分のみの出場となったものの、パス本数両チーム最多の101本を記録。

「時間帯別パス本数」を見ても、守田のパス本数とチームの優勢な状況が面白いほどに比例していることがわかる。後方では常にポジショニングをずらしながら局所的な優位を作って前進に貢献し、敵陣に押し込んだらボールサイドにも顔を出してテンポやアクセントを生み出し、チームの攻撃に大きく影響を及ぼす役割をこなしていたと言えるだろう。

 

対仙台の狙いを着実に実行した守田

フロンターレにとって対仙台のポイントはサイド深くの攻略にあると予想していた。

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実際、フロンターレは何度もサイド深くに進入して崩す形を見せ、たびたびゴール前に迫ることに成功した。

守田もサイドでの崩しに絡むシーンが多く、守田の「パスを出した位置」を見ても、幅広い位置からパスを出しているのみならず、右サイド奥(右ハーフスペース)で最も多い15回もパスを出していることが目立っている。

(カッコ内の数字はそのエリアのパス本数のうちの失敗した数)

そして、このパス15回のエリアから出したパスの受け手は、馬渡5回、脇坂4回、齋藤3回、田中2回、長谷川1回であり、3,4人の選手が流動的に絡みながら何度もサイド深くの崩しを成功させていたことがわかるだろう。

 

さらに、守田の「パスを出した先」を見ると、敵陣内の割合が明らかに多いだけでなく、ファイナルサードへのパス(図内の右から2列目)がかなり多く、両サイドともに多いのも特徴的である。

(カッコ内の数字はそのエリアのパス本数のうちの失敗した数)

そして、「パスを出した位置」「パスを出した先」を並べて、さらにトライアングルでのパス交換のイメージを重ねてみると、フロンターレの右サイドの崩しに守田が関わっていたことがよりイメージできるだろう。

左サイド奥でのパスも多い点については、左サイドでのトライアングによるサイド深くの崩しにも絡んでいたようにも見えるが、パスの詳細を見てみると少し傾向が異なるようだ。

守田の攻撃のスイッチを入れるパス(「展開・縦パス」と「裏へ」のパス)を見てみると、左サイド奥へのパスは中央からのより大きな展開のパスが多いことがわかる。右サイドや中央で味方と短い距離のパス交換をしつつ、左サイドライン際に開いて待つ長谷川へのロングパスを狙っていたと言えるだろう。実際に長い距離のパスもほとんど成功させている。

 

この試合での守田のパスがチームの攻撃に与えた影響は大きく、大島不在の中でもチームの狙いを着実にプレーとして実行したと言えるだろう。

 

守田の特徴、そして大島との差とは

ともにボランチをメインポジションとする大島と守田。ボランチのプレー結果は、試合展開やチームのその試合での狙いに影響を受けやすいと言えるだろう。

そこで、その試合のチームのボール支配率とパス総数を踏まえた上で、これまでにパス分析を行った4試合(大島:3試合、守田:1試合)を比較してみたい。

特にフロンターレの場合は、ボールを支配し相手を揺さぶるパスが多い展開になればなるほど、パス成功率が高くなり、グラウンダーのパスの割合が増え、つなぎのパスの割合が増えやすいと考えられる。

それを踏まえると、大島の3試合と守田の1試合を比較するにあたり、割合という面から評価するのは適切ではないかもしれない。

しかし、1つ気になる点として注目したいのが左足のパスの割合。守田も大島と同じく全体の約2割が利き足でない左足でのパスである。

以前からの仮説の1つである「大島は利き足でない左足でのパスをうまく使っているのではないか」という点について考えてみると、これは大島の左足のパスが特別多いわけではないとも捉えられるし、逆に守田も左足のパスをうまく使っているという可能性も考えられる。

そこで、守田の仙台戦の左足のパス22本の詳細を見てみると、9本が攻撃のスイッチを入れるパス(「展開・縦パス」と「裏へ」のパス)であった。

左足でも長い距離のパスを出しており、成功確率も高いことがわかる。大島の湘南戦の左足のパス(スイッチを入れるパスのみでなく、左足のすべてのパス)と比較しても、守田の左足のパスのレンジの長さがよくわかるだろう。

さらに、両者の左足のパスの傾向として左サイドへのパスの割合が多いことがわかる。これは、体の向きやパスの軌道を考慮して意図的に左足でパスを出していると考えられるだろう。このことからも、状況に応じて左足でのパスを効果的に使っているという仮説の正しさに近付いているように思える。

1試合同士の比較では何かを言い切ることは難しく、特に守田のほうが大島よりも左足の効果的なパスを出していると言いきることは避けたいが、少なくとも大島と同じように守田も左足のパスをうまく使っている可能性は高いと言えるだろう。この左足のパスの効果や割合については、より多くの選手を対象に比較することで今後も読み解いていきたい。

 

そして、大島と守田の比較という意味で一番気になるのは「レイヤー」によるパスの評価結果。

※「レイヤー」の詳細については前回記事参照。
Jリーグ屈指のボランチの凄さとは【大島とサンペールのパス分析&比較:第9節 ヴィッセル神戸vs川崎フロンターレ】

大島の神戸戦のパス守田の仙台戦のパスを比較すると、傾向としてかなり似ていることがわかるだろう。

仙台戦の守田のほうが、第1レイヤー内(守備側FWの手前)のパス第2レイヤーから第1レイヤーへのパス(守備側FWの奥から手前へのパス)が少し多いが、これは大島と守田の違いというよりは、この2試合での相手の守備陣形の違いが大きく影響していると考えられる。

神戸戦では相手が守備時に前線が1枚であったため大島が第1レイヤーまで下がる必要はなかったが、仙台戦では相手が守備時に前線が2枚であったため、ボランチ1枚が後方に下がって数的優位を作ってから前進するシーンが多くなった。また、第2レイヤーから第1レイヤーへのパス(守備側FWの奥から手前へのパス)が多いのは、前進に行き詰まって下げたというよりも、守田が守備側の2トップの真横や少し後ろで後方からパスを受け、ダイレクトでパスを返して守備側を意図的に寄せようとしていた狙いが影響していると考えられる。

そして、大島と傾向が似ていて評価できる点が、レイヤーをまたぐパスの多さだろう。第2レイヤーから第3レイヤーへのパス(守備ブロックの中盤を越えるパス)はそれぞれ14本13本であり、しかもほとんどが成功。さらに、第2レイヤーから第4レイヤーへのパス(守備ブロックの中盤の手前からDFラインの裏へのパス)もそれぞれ3本ずつ

短い距離でのパス交換が多いながらもDFラインの裏への決定的なパスも狙えることは、ボランチとして守備側により脅威を与える選手であることを表していると言えるだろう。

 

守田のパスを1試合分析した限りでは、日本代表に呼ばれるレベルだけあって大島にも引けを取らない内容であったように見受けられる。

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しかし、このパフォーマンスを毎試合安定して継続できるのか攻撃のみならず試合全体をコントロールできるのかチームが苦しい状況で決定的なパスで勝利を手繰り寄せられるのか、という点にはついては、経験に勝る大島のほうがまだまだ上回っている印象が強い。

大島と守田のパス分析をしていくことで、大島の凄さの言語化に挑戦しつつ、守田の成長の軌跡を見守っていきたい。

FIゼミ特別企画の共同レビュー記事はこちら
男気を跳ね返した王者、かすかな不安と希望 【川崎vs仙台レビュー】

前回のパス分析記事はこちら
Jリーグ屈指のボランチの凄さとは【大島とサンペールのパス分析&比較:第9節 ヴィッセル神戸vs川崎フロンターレ】

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