収穫は勝ち点3と新戦力一挙デビュー。ニューカッスル 対 アーセナル レビュー【2019/20 プレミア第1節】
2019-2020シーズンのプレミアリーグの開幕戦。アーセナルはアウェイでニューカッスルと対戦。
Contents
個性的なニューカッスルの前線と自力に勝るアーセナル
試合結果
2019/8/11 プレミアリーグ 第1節
ニューカッスル 0-1 アーセナル
57’ オーバメヤン
ウィロックとネルソンが開幕スタメン
アーセナルはプレシーズンでも採用し続けた4-2-3-1で開幕に臨んだ。エジルとコラシナツは襲撃事件の余波によりベンチ外。ラカゼットはプレシーズンでの軽傷によりベンチスタート。新加入のペペ、セバージョス、マルティネッリ、ダビド・ルイスが揃ってベンチ入り。
ニューカッスルは新加入のジョエリントンが開幕からスタメン。武藤はベンチスタート。フォーメーションはアルミロンがシャドー気味の3-5-1-1。
アーセナルのビルドアップを封じるニューカッスル
ニューカッスルは5-3-2のブロックで中央を圧縮してサイドにボールを追い込む狙い。
ジョエリントンとアルミロンの2枚はCBにプレスをかけるよりもジャカとゲンドゥージをケアすることを優先し、中盤3枚も中央のパスコースを塞ぐ意識が強いため、アーセナルは中央に縦パスを通すことは困難で、後方でのパス回しはCBとSBの横パスになりがちに。
パスのルートとタイミングがわかりやすいため、SBにパスが入ったタイミングでWBが寄せてきて、アーセナルのSBはそこから前を向くことができず。
ボールサイドのWBが前に出て寄せたタイミングで最終ラインはスライドし、4-4-2のような状態を作って全体のバランスを維持。
ニューカッスルは比較的高い位置をでアーセナルの前進を防ぐことに成功していた。
その中でも、ゲンドゥージやナイルズが独力でドリブルで持ち運ぶことでファイナルサードまで前進するシーンも少なからずあり。
また、ニューカッスルからボール奪取後にジャカを起点にした縦に早い展開で速攻を繰り出し、ムヒタリアンやオーバメヤンらによってゴール前まで進入するシーンは何度か作れており、遅攻より速攻で得点の可能性がある展開となっていた。
アーセナルは、前半終わり頃からビルドアップ時にSBのポジショニングを少し後ろ目にすることで、相手のWBが寄せにくくなり、そこから縦に入れられなくても、ボランチを経由して逆サイドに展開する形を徐々に作るように。
相手の中盤の左右のスライドが追いつく前に逆サイドに展開することで、サイドからファイナルサードまで前進するシーンを徐々に増やしていく。
また、基本的に中央にとどまっていたダブルボランチであるが、ボランチの片方がサイド寄りにポジショニングして高い位置にSBを押し上げてパスコースを複数作る工夫も前半終わり頃から見られるように。
徹底的に左サイド奥を狙い続けるニューカッスルの攻撃
一方でニューカッスルの攻撃は、徹底的に左サイド奥(アーセナルの右サイド)を狙う形。
ミドルゾーンで4-4-2のブロックを作るアーセナルに対し、ジョエリントンもしくはアルミロンが左サイド奥のスペースに走り込んでボールを受けて起点を作り、そこからリッチーもオーバーラップして絡むことで、左サイドから崩すことを狙った。
左サイド奥まで進入してクロスを上げるシーンが何度かあるものの、ナイルズの粘り強い守備によりフリーでクロスを上げさせることはほとんど無く、クロスが上がってもアーセナルのCB陣が中央で冷静に跳ね返し続けた。
ジョエリントンの高さやキープ力、アルミロンの推進力・突破力、シェルビーの精度の高いミドルレンジのパスなどが目立つシーンもあったものの、連動した攻撃はそれほど多くなく、アーセナルのゴールを脅かすには至らなかった。
前半は、両チームともにそれほどチャンスは無くスコアレスで終了。
ニューカッスルの采配がターニングポイントに
後半に入っても両チームの狙いは前半と大きく変わらず。
ビルドアップを少しずつ改善しつつ、速攻でも可能性を見せていたアーセナルがやや優勢の展開。
先に動いたのはニューカッスル。53分、シェルビーに代えてウィレムスを投入。ヘイデンがアンカーに入り、ウィレムスは左WBに。リッチーとロングスタッフが内側のやや高い位置を取り、フォーメーションは3-3-2-2気味となる。
ニューカッスルはこの変更が裏目に出ることに。ピッチの選手たちにこの変更がスムーズに伝わっていないように見え、数分間バランスを崩しがちになる。
すると57分、ニューカッスルの後方でのビルドアップでのパスをナイルズが抜群のタイミングとスピードでインターセプトすると、そのまま右サイドを前進。中央ではオーバメヤンがゴールに向かってフリーになりながらポジショニングを取ると、ナイルズはそれを見逃さずにアーリークロス。オーバメヤンが冷静にGKの頭上を超えるシュートを決め、アーセナルが先制。
ビハインドとなったニューカッスルは、守備でも前から積極的にプレスをかけるようになり、3センターではなく「2トップ+攻撃的MF 2枚」のような立ち位置でアーセナルのCBとボランチにプレッシャーを与えるが、アーセナルの後方の選手たちは角度を作ったポジショニングとダイレクトパスによりプレスをうまくかわすことで、逆にスペースができやすくなった中央で2列目の選手にボールを繋げるシーンが増えていく。
新戦力3選手が次々にデビュー
リードを奪い優勢に進めるアーセナルは、63分にウィロックに代えてセバージョスを投入。期待の新加入選手が開幕戦でトップ下でデビュー。
劣勢のニューカッスルは、66分にロングスタッフに代えてサン・マクシマンを投入。アルミロンが2列目に下がり、サン・マクシマンが2トップの一角に。新加入のドリブラーによって流れを変えたい狙い。
アーセナルは、70分にネルソンに代えてペペを投入。クラブ最高額の移籍金で加入した期待のサイドアタッカーも開幕戦でデビュー。
試合は徐々にオープンな展開に。ニューカッスルの前線の選手たちは個々に強烈な特徴を持つものの、連携面はまだそれほどでもなく、アーセナルの守備を崩すには至らず。
アーセナルはリードを活かして試合を優位に進め、オーバメヤンがサイドに流れてボールを受けたり、セバージョスがキープ力を活かしたりして、時計の針を進める。
83分、アーセナルはムヒタリアンに代えてマルティネッリを投入。18歳の新加入選手も開幕戦でデビューすることに。
ペペやセバージョスが味方と息が合わずにボールロストするシーンがいくつかあったものの、そのままアーセナルが1点を守りきって開幕戦で勝ち点3を手に入れた。
ビルドアップの整備はいまだお預け状態か
結果的に勝利したものの、ビルドアップには物足りなさを感じざるを得なかった。前半終わり頃から多少の工夫は見られたものの、相手の守備のやり方を上回る対応を組織的にやってほしいところ。
昨シーズン前半にたびたび見られたような、シンプルにボランチが後方に下りて数的優位を作りつつ、サイドに張るSBと中に絞る2列目の選手で複数のパスコースを作るようなプレーが減ったのはなぜだろうか。チームとして狙いが別にあったのか、ボランチで出場する選手たちのアレンジに任せているのか、速攻がある程度機能していたからそれで良かったのか。
また、最終ラインでのパス回しでは、横パスだけでなくCBから対角のSBへのサイドチェンジのロブパスなどももう少しチャレンジして欲しいところ。
アーセナルのCB陣のパス
【左】パパスタソプーロス、【右】チェンバース
引用元:アーセナル公式
一人飛ばすパスにより、相手のスライドの隙を突く狙いが欲しかった。そのうち出番が来るであろうダビド・ルイスにはそのあたりを期待したい。
守備ではナイルズが1対1で簡単に突破を許すこと無く奮闘し、ゲンドゥージやチェンバースもその周りでうまくカバーして安定した守備を見せていた。
前半はアルミロンやリッチー、終盤にサン・マクシマンのドリブルを右サイドで何度も受けたものの、決定機を作らせずに守りきった。
アーセナルとしては、プレシーズンにコンディションやパフォーマンスに不安が感じられたモンレアルのサイドを狙われたほうが厄介だったかもしれない。
新戦力3選手はお披露目程度に
1点差という状況であったものの、セバージョス、ペペ、マルティネッリがさっそくデビュー。特にプレシーズンマッチに出場していないペペの出場は意外であったと言えるだろうか。
セバージョスもプレシーズンマッチで2試合合計40分ほどしかプレーしておらず、特にペペとセバージョスはフィットしてるとは言えない状況。いずれも自身のプレースタイルを感じさせるシーンがあったものの、パスが合わずにボールロストするシーンがあり、味方との連携はまだまだと言えるだろう。
レギュラークラスに怪我人が出ない限り、しばらくは途中出場で徐々にフィットさせていくことになるだろうか。
ビッグマッチ連戦の前に連勝スタートはマスト
次節はホームでのバーンリー戦。ここはきっちり勝って連勝スタートにしたいところ。おそらくラカゼットは復帰できるはずで、トレイラにもスタメンの可能性があるかもしれない。
気になるのはエジルとコラシナツの状況。トレーニングできているのかもわからず、復帰時期がなかなか読めず。アクセントを付けられるこの2人はリバプール戦とトッテナム戦には間違いなく必要だろう。
エジルとコラシナツの問題が長引く恐れがあるのであれば、次節バーンリー戦でペペやセバージョスを長く起用してフィットを急がせる可能性も出てくるだろうか。
シーズン序盤の山場に向けてエメリの起用法に注目したい。
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