ボランチペアの役割と狙いの違い。守田は低調だったのか【大島と守田のパス分析&比較:第11節 清水エスパルスvs川崎フロンターレ】

2019年5月17日川崎フロンターレ

パス分析の比較サマリー(清水戦のみ)_大島と守田

大島と守田がスタメンとしてボランチでコンビを組んだ清水戦。ミッドウィークのACLの試合に続いてのコンビとなった。

結果はアウェイで4-0で快勝。しかし、内容は決して圧倒とは言えず、ボール支配率やパス本数もフロンターレとしては低い数字であった。

これまでに大島のパス分析を3試合、守田のパス分析を1試合行ってきたが、今回は初めて、同じ試合での2人のパフォーマンスをパスの観点から分析してみたい。

 

この試合の2人のパフォーマンスは?守田は低調だったのか?

圧倒したとは言えない清水戦で、大島と守田のパフォーマンスはどうだったのだろうか。

大島と守田のパス分析(時間帯別パス本数)2019 J1 第11節 清水エスパルスvs川崎フロンターレ

2人の「時間帯別パス本数」を見ると、ともにパスに多く絡んでいる時間帯の傾向が似ており(20分前後、40分手前、50分前後、80分前後)、さらにフロンターレが優勢に進めていた時間帯とも比例していると言えるだろう。やはりフロンターレの攻撃のリズムを作るうえで、ボランチのプレーは重要なキーとなっているのがわかる。

しかし、この試合で目立ったのが守田のパスの失敗の多さ

守田はこの試合、83本のパスのうち14本を失敗しており、パス成功率は83.1%となった。フロンターレのボランチとしては低い成功率と言えるだろう。大島も含めた過去4回のパス分析結果と比較しても、ダントツに低い成功率である(これまでで一番低かったのは鳥栖戦の大島で88.2%)。試合を見ていた印象としても、守田のところでボールロストするシーンが多かったのは誰の目にも明らかであった。

では、守田のプレーの精度が低調だったということだろうか?それとも、味方のポジショニングが悪かったのだろうか?

紐解いていく上で注目したいのが、この試合の守田の「左足でのパス」と「ダイレクトパス」の多さ。ともに30%前後というのは、これまでのパス分析のなかでも突出した多さである。
(【過去4回のパス分析結果】「左足でのパス」:20%前後、「ダイレクトパス」:18~25%

利き足ではない左足でのパスダイレクトパスが多かったことが失敗したパスの多さにつながったのだろうか。

では、失敗したパスの詳細を見てみたい。

守田が失敗したパスの内訳(失敗:14本)

  • 右足でのパス:7本
  • 左足でのパス:7本

失敗したパスのうち半分が左足でのパスであり、

  • トラップ:6本
  • ダイレクトパス:6本
  • フェイクバック:2本

さらに、ダイレクトパスも6本である。

  • つなぎ:5本
  • 展開・縦パス:5本
  • 裏へ:4本

さらに、「裏へ」のパス4本は紛れもなくチャレンジしたパスであり、「展開・縦パス」5本も局面を変えるためにチャレンジしたパスであると捉えることができるだろう。

 

利き足ではない左足でのパスダイレクトパスは精度が落ちやすい要因でもあり、またチャレンジしたパスはもともと成功確率が低いのを覚悟したうえで出したパスである。

利き足でない足でのパスやダイレクトパス、チャレンジしたパスであっても成功させるのが一流の選手ではあるけれども、決してこの試合の守田が簡単なミスを多くしていたというわけではないと言えるだろう。

 

ペアとしての分析。役割や狙い、プレーエリアに差はあるのか?

次に、エリアの観点で大島と守田のパスを比較してみたい。

傾向に差があるのだろうか?そして、守田のパスはどのエリアで失敗していたのだろうか?

(カッコ内の数字はそのエリアのパス本数のうちの失敗した数)

「パスを出した位置」を比較すると、一番はっきりとわかるのはプレーエリアの広さの違い大島のほとんどのパスが中央からであるのに対し、守田は左右のサイドからもパスを出している。さらに、大島は自陣側からのパスが多いのに対し、守田は敵陣内でのパスが多くなっている

これまで2人が同時に出場した試合を見てきた中でも、ボール保持時には守田のほうがより前目にポジショニングしているシーンが多い印象が残っていた。

狭いスペースでのボールタッチを苦にせずチャンスメイクのパスも出せる大島が前で、守備面での評価が高い守田が後ろのほうが良いのではとも考えられるが、フロンターレが押し込んでいる状況でボールロストした際に、前で再びボール奪取するために守田の球際の強さを活かしたい意図があるのではと考えられる。

そして両者に共通していることは左サイド奥でのパスの多さ。この試合では、スタートは442で左に齋藤、右に脇坂であり、前半途中から4231に変更し、脇坂がトップ下に移動し、2トップだった小林が右サイドに移る形となった。脇坂は中央でのプレーを好み、小林はゴール近くでのプレーを好むため、中盤の右サイドの選手がサイドに張るシーンは少なく、右サイドは右SBの馬渡がオーバーラップして使う傾向にあったため、ボランチ陣も左サイドに人数をかけて崩す狙いを持っていたのだろう。

(カッコ内の数字はそのエリアのパス本数のうちの失敗した数)

「パスを出した先」を比較すると、両者ともにピッチ全体に満遍なくパスを散らしている印象があるが、守田のほうがよりゴール近くへのパスを出している割合が多いことがわかる。やはり守田のほうが幅広くかつ前線に絡んでいくポジショニングを取っていることがわかる。

さらに、このデータからも左サイド奥でのパスが多いことが両者ともに明確である

守田の失敗したパスという観点では、ファイナルサード(図内の右側2列)へのパスが8本であり、エリアの観点からも、チャレンジしたパスが失敗の多さにつながったと言える。

 

次に、両者の攻撃のスイッチを入れるパス(「展開・縦パス」と「裏へ」のパス)を比較してみる。

大島と守田のパス分析(スイッチを入れるパス)2019 J1 第11節 清水エスパルスvs川崎フロンターレ

大島が左サイドへのパスが多いのに対し、守田は中央と右サイドへのパスが多いことがわかる。また、守田の失敗したパスを見ると、ダイレクトパスかつ中央へのパスが多く、ここからもチャレンジしたパスであると捉えることができる。

大島のピッチ中央でのダイレクトパスの多くが成功しており、一発でチャンスを作るパスではないにしろ、大島の局面を変えて攻撃のスイッチを入れるパスが効果的であることが表れていると言える。一方で守田はゴール近くへのパスが多く、よりチャンスに直接つながることを狙ったパスが多いと言えるだろう。

レイヤーでわかる清水戦の低調さ

※「レイヤー」の詳細については過去記事参照。
Jリーグ屈指のボランチの凄さとは【大島とサンペールのパス分析&比較:第9節 ヴィッセル神戸vs川崎フロンターレ】

大島と守田のパス分析(レイヤー)2019 J1 第11節 清水エスパルスvs川崎フロンターレ

(カッコ内の数字はそのエリアのパス本数のうちの失敗した数)

「レイヤーごとのパス本数」を見てみると、前回のパス分析での比較時と同様、やはり大島と守田で全体の傾向はかなり似ていることがわかる。基本はボランチらしく第2レイヤー内(守備側のFW-MF間)でのパスが多く、第1レイヤー(守備側のFWの手前)でサポートもしつつ、ゴールへ向かうレイヤーをまたぐパスが多くなっている。守田のほうがよりレイヤーをまたぐパスが多いものの、その分失敗したパスも多い。

しかし気になるのは、両者ともにレイヤーを下げるパスが多いこと

【参考】神戸戦の大島と仙台戦の守田のレイヤーごとのパス

神戸戦の大島、仙台戦の守田のパスと比較すると、清水戦での大島と守田のレイヤーを下げるパスの多さがよくわかるだろう。

第2レイヤーから第1レイヤーへ下げるパスはビルドアップ時に相手を揺さぶるために使うシーンも多いが、第3レイヤーから第2レイヤーへ下げるパスは基本的に前進に行き詰まった状況でのパスであるはずである。

清水戦は押し込んでいたシーンはそれほど多くなく、相手の守備に対して苦戦した部分もあり、結果として点差が付いたものの内容ではそれほど圧倒していなかったことがここからもわかるだろう。

 

守田のチャレンジは成長への第一歩

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大島が負傷離脱していた1ヶ月間、守田と田中碧がボランチのコンビを組む試合が多かったが、物足りなさを感じたのは局面を変えたりチャンスを作ったりする狙いのあるパスの少なさ。足元の技術は水準以上ではあるものの、やはりそういうパスが出せるようにならないと相手に脅威を与えられる選手とは言えないだろう。

そういう意味では、この清水戦で守田が積極的に左足でのパスやダイレクトパスも駆使しつつアクセントを付けようとしていたことは、相手に脅威を与えられる選手になろうとしている姿であると捉えられるのではないだろうか。

より運動量をベースにダイナミックなプレーができる田中碧も含め、フロンターレのボランチ陣の今後の進化がますます楽しみであるし、それをパス分析という形で追いかけていきたい。

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