”メトロノーム”大島のパスを分析してみた【第7節 サガン鳥栖vs川崎フロンターレ】

Jリーグ

J1第7節のサガン鳥栖vs川崎フロンターレ。フロンターレは憲剛と守田が欠場となる中、中盤のキーマンとなったのは1ヶ月ぶりに復帰した大島。

実況に「まるでメトロノームのよう」と言わせるゲームコントロール・展開力で存在感を発揮。

復帰戦ということでコンディションが100%とは言えず、フル出場にも関わらずスプリント数がわずか1回。しかしパス本数はチーム最多で、決勝点のアシストも。まさしくマン・オブ・ザ・マッチ級の活躍を見せた。

チームとして結果・内容ともに大満足というわけではない試合であったかもしれないが、大島の復帰が勝利に繋がったことは間違いないだろう。

そんな大島の凄さはいったいどこにあるのだろうか。

Jリーグを定期的に見ている人はフロンターレサポーターでなくても大島の凄さがわかるはずである。しかし、その凄さを言語化するのはなかなか難しい。

そこで、ゲームをコントロールするボランチとしてキーとなる「パス」に注目して分析することで、大島の凄さの言語化に挑戦してみたい。

※鳥栖戦の試合内容については、他の方のマッチレビューで確認してください!

「相手陣地でプレーしたいんだ!」~2019.4.14 J1 第7節 サガン鳥栖×川崎フロンターレ レビュー

【Review】2019年J1第7節 川崎フロンターレVS.サガン鳥栖「個人的なことはチームのこと」

【マッチレビュー】論語と算盤の狭間 2019年J1リーグ 第7節 サガン鳥栖×川崎フロンターレ

 

【分析方法】”パス前の動作”と”パスの意図”に注目

大島の鳥栖戦の各パスについて、以下の8つの観点でデータを取っていく。
(ヘディングによるパスは含まず、キックによるパスのみをカウントする。)

  • ①パスを出した時間(試合時間)
  • ②パスを出した位置(立ち位置)
  • ③パスを出した先
  • ④パスを受けた選手
  • ⑤パスの成功/失敗
  • ⑥パスの種類(グラウンダー、浮き球)
  • ⑦パス前の動作(トラップ→パス、ダイレクトパス)
  • ⑧パスの意図(つなぎ、展開・縦パス、裏へ)

「②パスを出した位置」と「③パスを出した先」については、ピッチをエリアで30分割してざっくりと位置を特定。

ピッチをエリアで30分割

また、「⑧パスの意図」については、完全に主観で以下のように分類。

  • 【つなぎ】定位置攻撃時の近い距離のパス
  • 【展開・縦パス】サイドチェンジやサイド前方へのパスや縦パス
  • 【裏へ】CB裏のスペースを狙ったスルーパス

取得していったデータがこんな感じ。鳥栖戦の大島の全パスについて同様にデータを取得する。

 

【サマリー】各データの割合

大島僚太のパス分析

鳥栖戦での大島のパス本数全部で85本

パスの成功/失敗

失敗したのは10本パス成功率88%。特別良いわけでも悪いわけでもない数字だろうか。

あまりにも低いと問題であるが、チャレンジングなパスもあるため、100%が必ずしも良いわけではない。

パス前の動作(トラップ→パス、ダイレクトパス)

個人的に注目していた「パス前の動作」では、【ダイレクトパス】全体の26%22本。比較するデータが無いものの、これは一般的には少し多い方ではないだろうか。

パスの種類(グラウンダーパス、浮き球)

「パスの種類」では、【グラウンダーパス】全体の92%78本。足元でパスを繋いでいく傾向が強いフロンターレの特徴にも左右されているだろうか。

この試合ではダミアンが出場しなかったが、前線の高さを活かそうとする試合ではもう少し浮き球の割合が増えることもあるかもしれない。

パスの意図(つなぎ、展開・縦パス、裏へ)

独自に分類した「パスの意図」であるが、【展開・縦パス】19%16本【裏へ】7%6本となった。

これらを合わせて全体の26%となる22本のパスは、なんらかアクセントを付けたり攻撃のスイッチを入れようとしたパスであると捉えることができる。

 

【分析】大島のパスはホントに”メトロノーム”のようだった?

大島のパスが「まるでメトロノームのよう」だったかを分析するため、「パスを出した位置」「パスを出した先」をそれぞれ確認してみる。

まず、「大島がパスを出したときの立ち位置」をエリアごとにカウントし、ヒートマップのような形で表現してみた。各エリアの数字はそのエリアでのパス本数を表している。

ボランチであるため、やはりピッチ中央からのパスが多い。そして、敵陣内の特に左右のハーフスペースからのパスも多くなっている。この試合のボランチの相方は下田であったが、それほど前線に絡むプレーを得意とせず、左右にテンポよくパスを展開するタイプであったため、大島がより前にポジショニングをしてそこからファイナルサードへパスを展開するプレーを意識的に狙っていたと言えるだろう。

 

さらに、「大島がパスを出した先(受け手が受け取った位置)」についても同様にチェックしてみる。

これを見ると、ピッチを満遍なく網羅していることがわかり、やはり「メトロノーム」のように左右に幅広く展開して組み立てていたと言える。

また、左右のサイドでチームとしての攻撃の特徴が現れており、左サイドはSH阿部とSB登里がこの試合で出場していたが、内側に入ってプレーするのがうまい選手であることから、手前でまずは預けたり、内側のハーフスペースに届けるパスが多くなっている。そして全体の傾向として、左サイドは人数を密集させて攻めようとし、逆に右サイドはスペースを空けておいて右SB(馬渡)に1対1で仕掛けさせることが多いため、右サイド奥への大島からのパスが多いことがわかる。

【分析】フロンターレの攻撃への大島のパスの影響度は?

次に、試合全体の流れ、フロンターレの攻撃への大島のパスの影響度を図るため、「アタックモーメンタム(引用:SofaScore「大島の時間帯別パス本数」を比較してみた。

ざっくり見ると、フロンターレが優勢な時間帯は大島のパス本数が多いことがほとんどである。大島がプレーに絡んでいることがチームの攻撃のバロメーターであると言えるだろう。逆に捉えれば、大島が多くボールに関与しなければチームとして優勢な状況に持っていけないということも表しているのかもしれない。

また、大島のパス失敗をきっかけに鳥栖に流れが傾いてるように見受けられる時間がいくつか見られる(20分頃、35分頃、44分頃)。これらの時間帯の失敗したパスの詳細を見ると、3つとも縦パスやサイドへの展開のパスであり、局面を変えたりスイッチを入れるためのパスとも言える。

アクセントを付けるプレーが大島に委ねられているシーンが多いと言えるだろう。

 

【分析】大島のパスはどのくらいアクセントになっている?

大島のパスがどのくらいアクセントになっていたかを確認するため、攻撃のスイッチを入れるパス【展開・縦パス】【裏へ】に分類したパス)22本に絞り、その「位置」「成功/失敗」「パス前の動作(【ダイレクトパス】、【トラップ→パス】)」を表してみた。

ミドルゾーンでのスイッチを入れるパスはほとんど成功しており、大島のパスをきっかけにファイナルサードへ進入しようとするシーンが多いことが読み取れる。

また、ファイナルサードへの決定的なパスは多くが失敗に終わっているものの、ここは一番守備が堅いゾーンになるためパス成功率が下がるのは仕方ない。しかし、ここのアイディアや精度をさらに上げることが、より怖い選手になるためには必要かもしれない。

 

また、別の観点として、スイッチを入れる時にダイレクトパスが多いのでは』という仮説を持っていたが、スイッチを入れるパス22本のうち8本ダイレクトパス。これは、わりと多いと捉えていいのではないだろうか。そしてここにこそ大島の凄さが表れているのではないか。

守備側がどんなに守備ブロックを堅めてスペースやパスコースを消していたとしても、精度の高いダイレクトでの縦パスなどが入れば防ぐことが容易ではなくなるはずであり、それを実行できるのが大島の秀でている部分と言えるのではないだろうか。

 

ダイレクトでスイッチを入れるパスを出すには、以下の5つの要素がプレーの精度・有効度に影響すると考えられる。

  • ①パスを受ける前の状況判断
  • ②大島へのパスの精度
  • ③パスを出す足の選択
  • ④キックの種類の選択
  • ⑤パスの精度


この中で②以外は大島に依存する要素である(①は味方のポジショニング・動き出しも影響する)。

①は定量的に評価することは難しいものの、大島の長所として評価されている点であると言える。さらに③についてもかなり重要なはずで、大島は両利きとまでは言えないものの、左足もうまく使っている印象が強い。左足を使う選択肢があることで、味方からのパスの精度や出したいパスコース、パスのタイミングなどに応じたより的確な選択ができると言えるだろう。

今回はパスを出した足(右足/左足)のデータを取得し忘れてしまったため深く追求できないが、次回の分析時にデータを取得することで、より傾向を浮かび上がらせたい。

【まとめ】比較することで大島の凄さを浮かび上がらせる

この1試合の大島のパスを分析したところで、事象がわかるだけで傾向や特徴を読み取るのは難しい

最終目標は「大島のプレーの凄さを言語化すること」。大島の凄さはパスだけではないものの、パスにも何かしら他の選手との明確な差があるのではないかと考えている。

大島の他の試合のパス分析他のボランチのパス分析大島不在時のボランチのパス分析などを今後行っていくことにより、大島の凄さをもっと浮かび上がらせたい。

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