書評:『サムライブルーの勝利と敗北』【あの『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の続編】

日本代表

あの『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の著者によるW杯日本代表の振り返り

衝撃のハリルホジッチ解任後、いかに戦術家ハリルホジッチが日本代表のワールドカップ躍進のために準備してきたかを、圧倒的な戦術眼と取材などから得た事実をもとに記された名著『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の著者による第2弾!!

全く期待されていなかったロシアワールドカップでの日本代表がグループステージを突破するのみでなく、3位に輝いたベルギーをあと一歩まで追い詰めた激闘の4試合を徹底分析

日本代表の4試合にフォーカスして戦術解説した今作『サムライブルーの勝利と敗北』

前作では、日本サッカーの強化の歴史から高度な戦術解説霜田氏の証言ハリルの残した「資料」という盛り沢山な内容で、幅広い読者がその内容に惹きつけられ、圧倒された。

関連記事:書評:『砕かれたハリルホジッチ・プラン ~日本サッカーにビジョンはあるか?~』

 

今作では、日本代表の4試合にフォーカスをあて、まるで五百蔵さんの解説を聞きながら4試合をすべて見返しているような内容に。

日本と対戦国の戦術を分析するにあたり、「数的均衡戦略」と「数的優位戦略」という視点がメインとなっており、単語単語は難しいものを使いながらも、フォーメーション図も交えて、すっきりと理解できるような解説がなされている。

そして、当然ながら4試合の解説のみではなく、日本サッカーが築いてきた価値観や考え方に潜む課題について、最後に明確に指摘されている。

 

まるで著者が隣で一緒に試合を見て解説しているような臨場感

この本を読んでいると、試合映像が頭の中で自然と浮かび上がり、さらにそこに著者・五百蔵さんが四角・三角・矢印を書き足して、戦術解説を目の前でしてくれているような錯覚に陥るほどの臨場感があった

特にベルギー戦は、90分間という時間をダイレクトに感じられる臨場感があり、さらに両チームを丸裸にした解説が付いてくる。

強豪をあと一歩まで追いつめたような印象が強烈に残っているベルギー戦であるものの、五百蔵さんの解説を読むと、いかに日本とベルギーに戦術的なレベルの差があり、2得点と3失点の裏にあるチーム戦術のベースに差があるかが思い知らされ、ベルギーを破るかもしれないと思ったあの数十分間の思いが無かったもののように感じられた

日本サッカーの発展のためにはこの本のような振り返りが必須

直前の監督交代という失態がありながらも好成績を残したことで、まるで日本サッカーが前進しているかのような印象を残してしまったロシアワールドカップ。

しかし、著者が指摘しているような、ピッチ内での”局所的な”優位性を求める志向や、長期的な計画に基づいた強化方針がない、まるで時間軸における”局所的な”協会の判断など、むしろ今回のワールドカップにこそ今後の日本サッカーの発展のための課題が浮き彫りになっている。

その課題をしっかりと改善していくためにも、まずは多くの人がこの本を手に取って読むことで、振り返っていくことが重要ではないだろうか。

サッカーファンにも、サッカーへの”局所的”ではない視点が求められていくと思う。

 

関連記事:書評:『砕かれたハリルホジッチ・プラン ~日本サッカーにビジョンはあるか?~』