貫禄のある試合運びで首位奪取!長崎 対 川崎F レビュー【2018 J1第28節】
勝てば首位浮上となるフロンターレは、中2日でアウェー戦。長崎はホームで中6日であり、力の差はあれど、コンディションに大きな差があると思われる一戦。
しかし、フロンターレがチームとしての狙いを着実に遂行し、堅実な試合運びで昨季覇者の貫禄を見せた。
Contents
試合結果とフォーメーション
2018/09/29 J1 第28節
長崎 1-2 川崎F
35分 知念
41分 小林
93分 ファンマ
フロンターレは、今季リーグ戦初の4-4-2の布陣を採用。前節から、阿部、下田に代えて、知念、登里を起用し、憲剛をボランチに。
長崎は、3-4-3の布陣。トップには鈴木武蔵が入った。
【Point①】右で揺さぶり左で仕掛けたフロンターレ
前半、明らかにフロンターレが意図していたのが、右サイドでキープしつつ相手を揺さぶり、左サイドに素早く展開して仕掛ける形。
長崎は守備時は5-4-1のブロックを敷いたものの、”4”の横移動が遅れる場面があり、そこを狙ったフロンターレ。
絶対的なキープ力とボールコントロールを持つ家長と大島、さらにエウシーニョの3人で右サイドでゆっくりボールを回し、相手を揺さぶりつつ、奈良、憲剛、谷口を経由して素早く左サイドに展開。登里や車屋が長崎の澤田("4″の端)の脇のスペースでうまくボールを受け、そのあとは登里と車屋の突破力を活かして左サイドを攻略した。
後方でのパス回しにおいて、谷口にボールが入らずに右サイドに展開し直す場面が2,3度あった際に、谷口が極端に悔しがっていたことからも、明らかにこの形を狙っていたことがわかる。
左サイドにボールが渡ってスイッチが入れば、個人で縦に突破できる登里と車屋が相手と2対2の状況となり、突破の可能性が高まる。さらに、場合によっては知念が下りてきてボールに絡む。
左サイド深くまで進入できれば、中央で小林と知念が待ち、右からはファーサイドにエウシーニョが詰め、家長もPA手前のスペースに走り込み、シュートまでつながる可能性が高い状況を作り出していた。
左サイドに突破力のある登里と車屋を並べ、今季リーグ戦初の2トップを採用した采配の狙い通りの形だったのではないだろうか。
【Point②】憲剛と大島からの裏へのロングパス
Point①で解説した展開に加えて、憲剛や大島から長崎のGKとCBの間のスペースめがけたロングパスを出すことを2つ目の狙いにしていた。
ボランチに憲剛と大島を並べたことで、後方から高精度のロングパスを出せる起点が2つになり、長崎が一瞬たりとも油断できない状況を作り出した。
また、2トップを採用したことで、裏へ抜けるのが小林と知念の2通りあり、さらには状況によってはエウシーニョまで抜け出す場面を作り、長崎のDFラインを揺さぶり続けた。
前半と後半でそれぞれ3回以上その狙いを実行しており、特にリードしていた後半は、その狙いであまりリスクを取らずに追加点を奪うことを狙っていたように思える。
【Point③】鈴木の投入で長崎の勢いを封じたフロンターレ
後半開始時に、2点ビハインドの長崎は澤田に代えてファンマを投入。前線にファンマを置いて起点を作りつつ、鈴木武蔵をシャドーにすることで、その運動量とスピードを活かしたい意図。
さらに、澤田の脇のスペースを使われていたのを修正するため、時間帯によって、鈴木武蔵やもう1人のシャドーの中村が"4″の端に入った。
長崎が修正してきたことと、フロンターレとしては疲労やリードしてる状況から、後半は長崎が優勢に進める。
長崎は左シャドーの中村(状況によって鈴木武蔵)がビルドアップ時に低めに下りてボールの前進を助けつつ、空いた左サイドのスペースで左WBの翁長がボールを受ける場面を効果的に作り出すようになった。
守備に不安のあるエウシーニョと家長のサイド(長崎の左サイド)からのクロスやセットプレーを何本も許したフロンターレでありながらもなんとか耐えしのぐと、74分に知念に代えて鈴木を投入することで修正。
4-2-3-1に変更し、家長をトップ下、鈴木を2列目右に入れた。鈴木の運動量により、攻略されていた右サイド(長崎の左サイド)の守備を立て直しつつ、攻撃でもカウンターや鈴木の高さを使って追加点を狙う形を作った。
インテリジェンスを身に着けた絶好調の登里
シーズン後半に入り、出場時間を増やしている登里。もともとの持ち味である縦の突破力と運動量はそのまま発揮しつつも、状況を的確に判断したうえでスペースや相手の間でボールを受ける動きに磨きがかかっている。
サイドで突破力のある選手としては、長谷川や齋藤学もいるものの、明らかに登里の序列が上になっているのは、このボールを受ける動きの上手さが要因だろう。
スピードとキレで試合終盤にカウンターで驚異になれる長谷川は別にしても、齋藤学がいまだフィットできていないのは、縦行く場面と間で受ける場面の状況判断、受けるためのポジショニングが、周りの選手と合っていないのではないだろうか。
守備での貢献も含めると、登里の序列が上であることは当然の状況に思える。
控え組がようやく役割をこなしつつある
この試合では出番がなかったものの、守田の離脱の穴を埋めつつある下田。フロンターレ流のパス交換にも慣れてきており、もともとの左足のキック精度の高さを活かせるようになってきている。素早いプレスやセットプレーのキッカーという面でも持ち味を発揮しつつあり、守田が復帰したとしても、試合によって下田を起用できるような状況になったのではないだろうか。
また、目に見えた結果はあまり残していないものの、鈴木も途中出場で出番を増やしている。右SBも務められる守備能力を持ち、運動量やキープ力、高さを持っていることから、攻守において貢献できる選手であり、リードしていてもビハインドでも、途中から投入しやすい選手となっている。
さらに、シーズン序盤に一定の出場機会を得ていたものの、その後出番が少なくなっていた知念であるが、ここに来て結果を出し始めている。ポストプレーやキープ力、ゴール前で詰められる動きは他の選手とは異なる特徴であり、シーズン終盤の苦しい状況で必ず必要な場面が出てくるだろう。昨季もシーズン終盤で一定の活躍を見せており、今季もこの調子で得点に絡むプレーをより多く発揮してくれることを期待したい。
残るは長谷川と齋藤学が力を発揮してくれれば、連覇に向けて盤石なスカッドと言えるだろう。明らかにチームにフィットしている長谷川の出場機会が少ないのは、鬼木監督が齋藤学がフィットするのを優先してきたことが要因になっているように思えるが、いまだフィットできない齋藤学とこれまでもフロンターレで一定の活躍をしてきた長谷川をどのように使い分けるか注目である。
家長不在で迎える次節・鹿島戦
首位に立ったフロンターレであるが、残りの日程で手強い相手が続いているため、全く楽観視はできないだろう。まずは次節、3位まで浮上してきた好調な鹿島との対戦になる。
家長が累積警告で出場停止となってしまったため、スタメンに誰を起用するのか注目が集まる。控え組がフィットしてきており、よりチーム全員が力を発揮しつつあるため、チームの雰囲気は連覇に向けて良好な状態と言えるだろう。